旅の蜃気楼

「その1秒を削り出せ」が心に沁みる

2012/01/19 15:38

週刊BCN 2012年01月16日vol.1415掲載

【根津発】新年恒例の箱根駅伝で、東洋大学が優勝した。往路、復路、総合、区間記録で驚異的な成績を残した。昨年は2位で首位との差は「21秒」だった。その悔しさをテコにして、猛練習でチームを強くした。合言葉は、「その1秒を削り出せ」。その結果の大記録だ。あまりにも完璧なレース展開なので、ハラハラするシーンがなく、テレビでの見応えは乏しかった。

▼見終えた後、自宅から近い東洋大学のある白山まで散歩してみた。よくぞあそこまで鍛えたものだ。そこまで心身を鍛え抜いた若い人たちの凄さに深い感動を覚えながら歩いた。「その1秒を削り出せ」。話は北京オリンピックに飛ぶ。女子ソフトボールで優勝したピッチャーの上野由岐子選手は「2位は2位になるだけの練習」という言葉を思い出しては練習に励んだという。1位になるほどの練習をした自信と誇りを感じた。

▼言葉というのは強い力をもっていると、身に沁みて感じた。女子ソフトボールチームが優勝した北京オリンピックが閉会した翌月の15日、米国でリーマン・ショックが発生して、日本の経済は奈落の底に落ちた。デジタル・IT業界も市場が20%縮小した。2009年の事業活動の苦しさは今も心身に残っている。

▼私自身、何度も挫けそうになった。そんな時、上野選手の言葉と女子ソフトボールチームが優勝した瞬間のシーンを思い出した。「2位は2位になるだけの練習」と呪文のように繰り返し、自分に言い聞かせ、挫けそうになる心を何とかもちこたえ、それを何度も繰り返した。いつの間にかリーマン・ショックから3年3か月が経った。『週刊BCN』の2012年の「IT企業トップの年頭所感」を読むと、日本企業の力強さを感じる。「その1秒を削り出せ」。年初に勇気をもらった。(BCN社長・奥田喜久男)

猛練習で王座を勝ち取った東洋大学は完璧な試合運びをみせた(2012.1.3付日本経済新聞より)
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