BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『サムスン式 仕事の流儀 5年で一流社員になる』

2012/06/28 15:27

週刊BCN 2012年06月25日vol.1437掲載

 今や世界に冠たる巨大家電メーカーとなったサムスン。あれよあれよという間にソニーやパナソニックの業績を追い抜いてしまった。

 今週取り上げるこの本の著者は、サムスングループで薄型パネルなどの製造を担うサムスンSDIに所属し、グループ長を務めた人物である。サムスンSDIは、グループ全体の系列会社のなかでも仕事の過酷さは一、二位を争っており、「チームの社員40人のうち、20人が入れ替わってしまうことまであった」そうだ。自らが体験したサムスン式の仕事術を、「入社前」から一年ごとに「五年目」までのステップに分けて説明している。といっても、教育カリキュラムを紹介しているのではない。仕事人としての心構えや行動の仕方を自らが仕えた上司や、同僚、後輩の例を引きながら解説している。

 さて読後感だが、日本企業のビジネスマンの仕事のこなし方と比べてそんなに特異性があるとは感じなかった。ただ、サムスンがすぐれているのは、全社に「凡事徹底」の精神が浸透していることだ。例えば、海外出張に出た際の「出張報告書」は、帰ってきた翌日の朝には提出し終えておかねばならない。だから、数か国を駆け足で回ってくる出張でも、社員は帰りの飛行機の中で報告書を書くのが習慣になっている。第一線の社員が肌で感じたことを経営トップが最優先で知りたいと考えており、それがスピード経営に生かされているのだ。

 現場主義とスピード経営。このあたりは日本の企業が見習うべきだと思う。(仁多)

『サムスン式 仕事の流儀 5年で一流社員になる』
ムン・ヒョンジン 著 吉原育子 訳 サンマーク出版 刊(1500円+税)
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