BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『なぜ 世界の人々は「日本の心」に惹かれるのか』

2012/08/23 15:27

週刊BCN 2012年08月13日vol.1444掲載

 “日本びいき”を自認する呉善花氏。韓国出身の著者の手になる最新刊だ。

 「世界の人々はいったい日本のどこに惹かれているのだろうか。(略)『日本の心』には、これ見よがしに自分を押し出す態度や姿勢を恥とし、できる限り慎ましく身を処そうとする謙虚な心がけが働いている。この自己抑制とも見える日本人に特有な心性は、人と人との親和で平穏な関係を生み出していく上での、他国の人たちにはあまり見られない大きな美点である」

 著者は、幕末から明治にかけて日本へやってきた諸外国の要人が書き残したものを紹介することによって、日本に対する評価を裏づけている。

 例えば、大森貝塚を発掘したことで知られるエドワード・モースの体験談。旅館で貴重品を預けた際に、仲居さんがお盆に乗せて部屋に置いただけなので、あきれながらも不安で仕方がなかったが、それから一週間ほど他へ出かけて戻ってみると、すべてがそのままあったことに心から驚いたと書いている。

 ラフカディオ・ハーンが熊本に在住していた頃の話。殺人事件の犯人が福岡でつかまり、熊本に護送されてきた。警部が殺人犯の了解をとって被害者の妻が背負う幼子に引き合わせて、「お前も人の子だろう……」というや、犯人が大粒の涙を流しながら幼子にわびる場面を描写している。

 時代は移り、人々の心も変わった。しかし、根底に流れる日本人の精神はかつてと同質と著者はみている。閉塞感が漂う日本に、勇気を与えてくれる本である。(仁多)


『なぜ 世界の人々は「日本の心」に惹かれるのか』
呉 善花 著 PHP研究所 刊(1600円+税)
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