著者は、SAPジャパンに新卒入社して史上最年少の30歳で部長に就き、グローバル全社6万人の世界上位2％に6年連続で選出されているというように、まばゆいばかりの輝かしい経歴をもっている人物だ。

　こんなふうに紹介すると、スーパーマンのような印象を与えるかもしれないが、本人は至って謙虚。同期に比べると「学歴なし、技術力なし、英語力なし」で最後尾からのスタートでした──と述懐するように、決して才能に恵まれていたわけではないようだ。そんな著者がステップアップするためにとった方法は、「まずは、すぐれた人を徹底的に真似する」ことだった。目標としたのは自分の上司で、プレゼンテーションに同行してミニディスクに録音し、声の抑揚のつけ方、間の置き方、スライドの画面を切り替えるタイミングなどを完全にコピーしようと努めた。実際に、上司が急に参加できなくなったプレゼンの代役を、見事にこなすほどまでになったそうだ。

　こんなふうにしてスキルアップに励んだ著者だが、「世界上位にいる人たち」の意識や行動にふれるうちに、結果は「行動する前」に決まるのではないかと考えるようになった。そして、行動する前に“失敗リスク”を下げて成功へ導く「プロトタイプ」/改善から“革新”へと意識を変える「ストレッチゴール」/「コミットメント」で“初速”を上げて一気にやりきるなど、独自のノウハウを身につけてきた。

　営業やマーケティングに携わる方に一読をお勧めしたい本だ。（仁多）