▼隣に座っていたOBC社長の和田成史さんが、右肘でこづいた。ソリトン社長の鎌田信夫さんの講演の途中だ。「鎌田さん、若いね。びっくり！」。昭和10年という鎌田さんの生まれ年の紹介を指差して言う。本当だ。77歳だと思って風貌を仰ぐと、確かに若い。講演では、売り出し前夜のソフトについて熱く語っている。旺盛な好奇心、誰彼構わず袈裟斬りにする鎌田節は、喜寿にしてまったく衰えをみせていない。

▼似ている人が大阪にいる。11月5日、自らが創業したソフト会社を200億円で売ったMOTEXの高木哲男さんだ。思い入れのある自社ビルで10月26日に会った。「僕の旬はね、ダイワボウ（情報システム）が飛ぶ鳥を落とす勢いの頃だよなー。当時は誰もできないネットワークの仕事が、なぜか僕のところにくるんよ。何でもやったね」。時折、故山村滋さんの名前が出る。どうも昔話になってしまう。

▼「鎌田さんに比べると、還暦過ぎはまだまだ小僧といわれそう。僕、鎌田さんと一度、呑んだよ。あの人は僕なんかよりもっと技術者寄りの人だよね」と高木さん。湧き上がる着想から価値を生んだ成功者が日本のソフト業界にも間違いなく存在している。（直）