旅の蜃気楼

紙の記事執筆とおさらばして

2013/05/22 15:38

【内神田発】『旅の蜃気楼』を再開して6回目の記事になる。もともと、『旅の蜃気楼』は『週刊BCN』の創刊号以来の常設コラムだったが、ビジネスメディア部の谷畑良胤部長が編集長を務めていた頃、「このコラム、もう打ち切りにしてもいいんじゃないですか」と引導を渡しにやって来た。それを聞いて、最初はムッとして、「あっ、そう」とだけ返事をしたら、「ネットのBizlineで継続してはどうですか」と提案するではないか。以前からネットでの情報発信に興味をもっていたので、「そうね、新聞に書くのはやめるわ」と即答した。そしたら、「本当にいいんですか」と、驚いた様子で聞き返す。そうした経緯があって、2012年10月8日号の掲載をもって、新聞の連載の最終とした。

▼その時、会長に就任したら『旅の蜃気楼』を復活しようと心の中で決めていた。そして今年4月1日の佐藤敏明新社長、私の会長就任を機にネットコラムを書き始め、2013年4月17日にこのコラムの再開となった次第だ。楽屋裏の話でお恥ずかしい限りだが、そんな経緯があったのです。

▼再開後の記事は、Bizlineとfacebookのノート欄に掲載している。寂しいが、長年親しんできた紙の新聞には掲載していない、というか掲載してもらえない。でも、私としては初めてのネット記事への挑戦だから、わくわくしている。新聞とネットへの記事掲載の違いは何となく感じていた。こうしてネットだけの記事の執筆を始めてみると、その違いを少しずつ実感し始めている。記事を書いている時(現在進行形)は、昔からの習慣で、限られた文字数の枠内に納めようと、頭の中で文章を組み立てる。しかし、ネット記事の場合は文字数制限が緩いので、思いつくままに書き進めることができると、最近は感じている。これは大きな違いだ。

▼違いはもう一つある。それは、文体について。新聞用の記事は「である調」だ。この書き方は簡潔に言い切ることが求められる。それが、「ですます調」だと、書き進めながら文章をまとめていく場合には、なんとなくしっくりくる。ネット記事は文字数の制限がないのと、書き込む内容が多少、お気楽なほうが読みやすいのではないかと、感じ始めている。これまでの記事をすべて「ですます調」に書き替えるようなことはしないが、これから先は「ですます調」を盛り込みながら書き進めます。

▼上高地の徳澤園と横尾の間で、トレイルランナーの姿を初めて見た。ゆっくりと歩く山旅の人たちを、さっと追い抜いて、その背中を見送ったと思っていたら、折り返して前方からヒタヒタと向かってくるではないか。走る人って、こんなに速いのだと感心してしまう。山旅の人たちに比べて見た目も美しい。妬けるほどのスマートさで、憎らしく思うほどだった。上高地は、合羽橋の上から見る穂高、明神ヶ岳のパノラマ状に広がった山々の姿は「美しい!」のひと言です。明神の方角に少し歩くと、自然が溢れかえっています。青い空に白い雪、茶褐色の岩山、清い流れの梓川……。上高地は日本の宝だ。明神をバックにして写真を撮りました。(BCN会長・奥田喜久男)

2013年5月20日記


河童橋から望む穂高の山々。有名な構図で記念の写真を一枚

前穂高が絶景を織りなす
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