BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』

2014/10/16 15:27

週刊BCN 2014年10月13日vol.1550掲載

埋蔵量は実は増えている

 「石油はあとX年で枯渇する」というまことしやかな噂を聞いたことがあるが、あの話はどうなったのか。石油の値段は、メジャーと呼ばれる世界の大手石油会社が決めているという、ややおぼつかない認識があるが、本当のところはどうなのか──。三井物産に入社し、一貫して石油を中心とするエネルギーに関わってきた人物が著わした本に答えを求めてみよう。

 まずは「石油はあと何年もつか」について。実は、これがなかなか難しいらしい。現存埋蔵量を生産量で割った数値をいえば、四十数年前には世界全体でおよそ30、つまりあと30年は生産可能な埋蔵量があるといわれていた。今、その数値が50年強になっている。採掘すればするほど埋蔵量は減っていくと考えるのが自然だが、年を経るほどに増えるのはなぜなのか。探鉱段階の埋蔵量の計算方法には、容積法に基づく計算方法のほか、アナロジー手法とか、マテリアル・バランス法、レザーバーシミュレーション法などがある。いずれにしても、埋蔵量は、そのときの経済条件や技術の進歩に左右されて、膨らんできているようにみえる。

 石油の価格についてはどうか。かつてはセブンシスターズと呼ばれる大手国際石油会社が世界を牛耳っていた時代があった(ちなみにセブンシスターズは、百田尚樹の小説『海賊とよばれた男』のなかで重要な役割を果たしている)。しかし、OPEC(石油輸出国機構)の誕生以来、その様相が大きく変わってきた。変遷の足跡をたどってみるのも興味深い。(仁多)


『石油の「埋蔵量」は誰が決めるのか?』
エネルギー情報学入門
岩瀬 昇 著
文藝春秋 刊(780円+税)
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