経済行動の原理は宗教にある

 宗教を信仰する人にとって、神は絶対的存在であって、その教義はものの考え方や日々の行動に大きな影響を与える。経済行動もまたしかり。それは民衆の文化・慣習から国の法になり、グローバル経済のルールにも大きく関わっていく。取引相手の価値観を知らなければ、相互の理解は進まず、経済活動に支障が出る。

 副題に『新版・世界四大宗教の経済学』とあるように、本書は2006年に文庫で刊行されたものを再編集した単行本。ユダヤ教、キリスト教、イスラム教、仏教の四大宗教に加え、インドのジャイナ教、儒教、ギリシャの古代宗教にも言及し、それぞれの宗教が「お金」についてどのように教えてきたのか、信者たちは「お金」にどのように対処してきたのかを、具体的なエピソードを交えて記している。ユダヤ教の利息の禁止と容認、キリスト教のプロテスタントと資本主義経済などは、非常に興味深い。

 国民の多くが無宗教である日本に、この考え方をただちに適用するのは難しい。それでも仏教や神道、儒教の考え方や行動原理は脱宗教化して残っている。お隣の中国はといえば、儒教や道教を生んだ国ではあるが、1949年以降は「宗教は民衆のアヘンである」と書いたカール・マルクスの宗教観──労働者の痛みや苦しみを根本的に治療するのは共産主義であり、宗教は一時的な痛み止めに過ぎない──に則り、宗教に一定の制限がかけられている。世界の巨大市場である現在の中国国民の経済行動が、どのような原理にもとづいているのか、本書を片手につらつらと考えてみるのは、かの国を理解するうえで決してムダにはなるまい。(叢虎)


『ビジネス教養としての宗教学』
白取春彦 著
PHP研究所 刊(1500円+税)