▼東北の日本海側にある記者の実家では、大晦日から元旦にかけてしんしんと雪が降り続けることが多い。幼い頃は、冷たい空気のなかで、早起きした祖父が炭火を熾して七輪で餅を焼き、雑煮をつくるのが恒例だった。元旦以外、台所に立つことなどなかった祖父は、不思議そうに眺める孫に対して、「休みなく台所仕事をしている女性陣を元旦くらいは休ませて、家長が雑煮をつくるのだ」と説明してくれた。子ども心になるほどと納得した記憶がある。

▼やがて代替わりして、我が家の雑煮は両親の合作になった。ふだんから並んで台所に立つことも多かったので、先の理屈からいえばあたりまえのことといえる。生活様式が変われば、価値基準も変わる。

▼年末、多くのITベンダー経営者にインタビューしたが、「顧客起点」という言葉がよく出てきた。モバイル端末の進化などにより、私たちの生活様式は大きく変わった。顧客起点で考えるソリューションのあり方も、これに伴い大きく変わっているのだ。

▼ちなみに我が実家の雑煮事情は、暮れに帰省し元旦は遅くまで寝ている不肖の息子のせいで、いまだ変革の時が訪れていない。（霞）