海外戦略は経験工学である

 経済大国で暮らすがために、多くの日本人は次のような思いを抱きがちだ。「日本人は優秀である」。ところが、アジアの国々も経済が発展し、豊かになってきた。著者は指摘する。「一人一人の能力は、日本人はアジア各国と比較してもそれほど高くはない」。アジアで成功するには、まず意識改革が必要となる。

 経済が発展する地域では、地場の企業が台頭して価格競争にもち込まれるなど、日本の大企業が苦戦を強いられる厳しい市場となる。そのため、熟成期を迎えたアジアでは、大企業よりも、中堅・中小企業に出番があると著者は主張する。成功事例も多い。本書では、アジアに進出した企業の取り組みについて、1章から3章で紹介している。

 最後の4章では、アジアに進出するための18のポイントを解説。「初年度から黒字で挑め」「小さな国は選ばない」「華僑、華人と組む」など、海外進出を計画中なら一読すべきノウハウが満載となっている。興味深いのは、著者が「海外戦略は経験工学である」とする理由。日本で同じ地域の中堅・中小企業が、海外でも同じ地域に進出するケースが多いことから、経験工学としている。成功者をみて「わしも行く」というわけだ。逆に、成功体験が身近にないと、地域まるごと海外進出に消極的ということになってしまう。

 ちなみに、日本企業は欧米で8割が赤字だという。一方、アジアでは日本企業が年間で9兆円を稼ぎ、大半が黒字とのこと。著者がアジア進出を勧めるのは、そのためだ。(亭)

『熟成期を迎えたアジアに羽ばたく日本企業』
増田辰弘 著
カナリアコミュニケーションズ 刊(1500円+税)