BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>「しゃべる」技術

2017/05/10 09:00

週刊BCN 2017年04月24日vol.1675掲載



「元あがり症」直伝の苦手意識克服法

 「私には人前で話すセンスがないんだ」「度胸もない」「しゃべるのが苦痛だ」。冒頭で紹介された言葉に、大きくうなずいてしまった。なかなか苦手意識が克服できない「しゃべり方」のいろはを、元あがり症の著者が伝授する。

 インターネットで検索すると、緊張せずに話す方法を紹介するサイトはたくさんみつかる。「ああ、なるほど」と理解したつもりでも、言うは易く行うは難し。「慣れが大事」と言われても、いざ人前に立つと緊張してしまう。きっと多くの人が共感するはずだ。

 著者は、北海道のラジオ局を中心に「しゃべり手」として活動していた。いわばしゃべりのプロだ。しかし、過去の営業マン時代は、あがり症だったという。しゃべれない人の気持ちを理解しているからこそ、原因分析が的確。ラジオDJならではの軽妙な表現で、内容は実にわかりやすい。

 仕事の会議やプレゼン、商談、買い物時の価格交渉や合コンなど、公私を問わずにしゃべる機会は多い。だからこそ、著者の「『話し方』が変われば仕事の結果が変わり、人生も変わっていく」との主張は腑に落ちる。

 カタカナ語が多いIT業界では、いかにわかりやすく説明できるかが重要だ。せっかくすばらしい機能を製品やサービスが備えていても、専門用語を連発しているだけでは、相手に魅力は伝わりにくい。みすみすチャンスを逃すことにもなりかねない。周囲の人に、「あいつ、なかなかやるな」と思わせるためにも、本書は一読の価値がある。(鰹)


「しゃべる」技術
麻生けんたろう 著
WAVE出版 刊
(850円+税)
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