▼武田信玄の足跡などを記した軍学書「甲陽軍鑑」は、近現代の歴史研究では資料的価値のない偽書とみなされてきたが、近年、その評価の見直しが進んでいる。国語学者の酒井憲二氏の研究がその端緒を開いたと言われるが、新資料が発見されずとも、従来の説を覆して真実に迫る新しい合理的な研究アプローチにたどり着いたところに歴史研究の奥深さを感じる。

▼甲陽軍鑑では「人は城、人は石垣、人は堀、情けは味方、仇は敵なり」という信玄の名言が紹介されている。人間をどう扱うかが最も大事な要素だというのは現代のビジネスでもいたるところで耳にする言葉だ。

▼ICT企業からDX企業への転身を目指すという富士通も、時田隆仁社長は「DXを成功させるための一番大事な要素は“人”」だとして、外資系のコンサルや大手ITベンダーの幹部をグループ内に迎え入れる。富士通自身のDXのけん引役を担ってもらう方針だ。その意気やよし。

▼現実には、経営層、管理職、現場、それぞれの層からさまざまな形でこうした刺激に対する拒否反応は出るだろう。その軋轢を乗り越えて変革を成すことができるのか。リーダーシップが問われる局面だ。(霹)