人間のコアバリューを考える

 医学博士・解剖学者であり、専門家と言えるほどの昆虫好きとしても知られる養老孟司氏と、人類学者・霊長類学者で京都大学総長を務める山極寿一氏の対談。それぞれの専門領域を通して見た現代の世界や日本社会の課題を論じ、人類の未来を語り合う。

 対話の終盤、テクノロジーや先端医療の発展は人間に多くのメリットをもたらしたが、人類は生命観をはじめとするさまざまな価値観を改めて見直すべき段階にきているという話題に行き着く。人間は「問い」をつくってそれに答えを出すことで進化してきた気になっているが、そもそも問いをつくった時点でそこからこぼれ落ちたさまざまな現象があり、現代の我々は人間というものを本来の姿よりも非常に抽象化して捉えていることを理解すべきではないかという山極氏の指摘にはうなずける。

 AIなどのテクノロジーが加速度的に人間の能力を拡張していく時代に生きているからこそ、人間のコアバリューを考え続けることには大きな意味があり、どう生きるかという思考にも直結する。(霹)
 


『虫とゴリラ』
養老孟司、山極寿一 著
毎日新聞出版 刊(1500円+税)