封じ込め成功の理由は強権だけではない

 新型コロナウイルスの感染拡大状況は国によってさまざまだが、欧米に比べるとある程度感染の抑制・制御が効いているのがアジア諸国である。その中でも中国では、他の多くの国で発生している「第2波」を回避するなど、感染拡大の出発点だったとは思えない成功を収めている(とされる)。

 その背景には、人々の行動に強力な制限を加えることができる社会体制があることは間違いないが、それと同時に指摘されるのが、本書で紹介されているような徹底したITの活用である。マスクや医療物資の不足には、ECサイト各社が旗振り役となって、転売や買い占めを防ぎながら適正流通を確保。突貫工事で作られた病院には、5Gを活用した遠隔医療の仕組みを導入した。人々の健康状態はモバイルアプリで管理され、これを“通行手形”をして利用することで感染を抑制する。ドローンによる医療物資の運搬や消毒薬の散布、外出中の人に対する警告なども行われた。日本でそのまま導入できるシステムは少なくとも、アイデアやコンセプトは先行事例として参考になるものも多い。

 また、本書の著者はガジェットから社会システムに至るまで中国ITに精通しており、中国最新IT動向の入門書としても興味深く読める。非常時のIT導入が速かった理由として、誰もが日常的に使う多数の便利なサービスが社会基盤として根付いており、その「積み立て」の上にコロナ対策のシステムが築かれたから、という指摘は示唆に富んでいる。(螺)
 


『中国のITは新型コロナウイルスにどのように反撃したのか?』
山谷剛史 著
星海社 刊(860円+税)