植物の生命力は、その再生能力にあり

 近所の古い家が取り壊されて更地になった。どことなく寂しい気持ちになったのも束の間、数週間で子どもの背丈ほどある雑草がところ狭しと生い茂り、生命力を誇示している。
 

 こうした雑草は刈ってもすぐに生えてくるし、除草剤を撒いても、根っこから引き抜いても生えてくる。この植物の逞しさがどこから来るのか興味が湧き、本書『植物のいのち~からだを守り、子孫につなぐ驚きのしくみ』を手に取った。植物と動物は細胞が集まってできている共通点があるものの、植物の生命力は動物をはるかに上回っている面がある。

 先の雑草の例で言えば、根の一部からでも完全体を再生できる。除草剤を撒いても土の深くまで張った根の一部さえ生きていれば、そこから元通りの姿に戻ることができるわけだ。人間に例えれば、切り落とした指の先から頭や胴体、手足など体全体を再生するようなもので、驚異的な生命力である。

 植物の再生能力は専門用語で「分化全能性」といい、極端な話、環境さえ整えば1個の細胞から根や葉、茎をつくりだすことができる。樹木を切り倒したあとの切り株からでも再生できるし、枝を挿し木しても再生する。もちろん枝や葉をいくら切り落としても、別のところから枝葉が生えてくる。

 これだけの生命力がある植物同士の生存競争となると、動物にも匹敵する弱肉強食の厳しい世界となる。緻密な生存戦略を練り上げて勝ち残ってきた植物たちの様子を、植物学者の田中修氏は生き生きと本書で描いている。(寶)


『植物のいのち~からだを守り、子孫につなぐ驚きのしくみ』
田中修 著
中公新書 刊(860円+税)