令和に目指す国家のあり方は

 新型コロナ禍や、それに伴う緊急事態宣言の発令は、国家のあり方についてあらためて考える機会をもたらした。本書は「自由」や「民主主義」「経済成長」「個人主義」を「戦後日本のアイデンティティー」と位置づけ、これらの価値観が限界を迎えていると指摘。その上で日本が今後、重きを置くべき価値観を示し、目指すべき国家像を提案している。
 

 民主主義が行き着いた先はポピュリズムであり、異質なものへの排除と向かった。個人の自由を徹底的に肯定した結果、人々の共同体への帰属意識が失われ、自分が何者であるかを定義づけることが難しくなった。経済成長を追い求めた社会は、人間関係に金銭的な価値を介在させ、友情や互助の精神を喪失させている。さらに菅政権は、効率性や個人主義を徹底化させる国づくりを展開し、日本人のつながりをより不安定にしていると主張する。

 このような現状に対し、筆者は他者からの承認による尊厳の付与と、重層的な時間の流れが共同体内に浸透させた共通感覚(コモン・センス)をベースにした国家を目指そうと訴え、効率性や合理性にとらわれない生き方の大切さを呼び掛ける。

 国家像と聞くと、政党、政治家が掲げるビジョンと考えがちだが、そうではない。混迷が続く今だからこそ、国民一人一人がどのような国で生きていきたいか、真に大切にしたい価値観は何かを考えることが重要である。本書はその思考を支える補助線となるだろう。(無)


『国家の尊厳』
先崎彰容 著
新潮社 刊(800円+税)