▼昨年秋以降、グローバル大手を中心に、テック企業の人員削減がなだれを打つように続いている。いずれも米国に本社を置くメタ、グーグル、マイクロソフトなど、1万人以上の大規模なリストラを発表する企業が相次ぐ。ここ数年の積極的な拡大路線から一転、縮小均衡へとかじを切り、確実視される景気後退への備えを進めているようだ。

▼米国の雇用指標を見ると、全体での失業率は依然改善傾向にあり、製造、建設、サービスなどの労働市場は堅調だ。また、もともと〝転職大国〟である米国の中でも、テクノロジー業界は特に人材の流動性が高いとされる。大手で勤務していた優秀なエンジニアであれば、次の働き口を見つけるのはそこまで難しいことではないだろう。

▼日本のＩＴ業界ではどの企業も人手不足を嘆いており、当面リストラの風は吹きそうにない。それどころか、「外資に流れていたエリート人材が獲得しやすくなる」といった期待の声すら聞こえる。ただ、優秀なデジタル人材には、国内でも製造や金融などあらゆる業界が高給でラブコールを送っている。ビッグテックを離れた人が自動的に流れ込んで来るような甘い状況は訪れそうもない。（螺）