BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『半導体産業のすべて 世界の先端企業から日本メーカーの展望まで』

2023/04/07 09:00

週刊BCN 2023年04月03日vol.1963掲載

「ラストチャンス」をものにするには

 ここ数年、半導体産業がかつてない注目を集めている。米中対立の激化により、米バイデン政権は輸出規制を強化する一方、台湾TSMCや韓国サムスン電子などの投資を自国に呼び込む形で、西側諸国による“半導体同盟”の形成に力を入れる。かつて半導体大国だった日本は世界の中でどのような役割を果たしながら、自国産業の持続的発展のロードマップを描くべきか、問われている。

 かつて世界シェア50%を握り栄華を極めた日本の半導体産業がなぜ凋落したのか、その理由を、1986年に締結された日米半導体協定に求める説明は多い。半導体産業の構造を解き明かす本書でも、衰退理由の第一として同協定の存在を挙げている。

 ただ、本書は加えて、総合電機メーカーの経営者が半導体事業の特殊性を理解していなかったこと、市場の構造変化に対応できなかったこと、独自技術に固執する一方でデファクトスタンダード製品を持てなかったことなどを指摘する。熊本へのTSMC工場誘致やRapidusの立ち上げなどが具体化し、今は国内半導体産業が再躍進するラストチャンスの時期とされる。しかし、技術トレンドや市場ニーズ、産業構造の大きな変化を見逃すと、20世紀の二の舞となる恐れがある。(螺)
 


『半導体産業のすべて 世界の先端企業から日本メーカーの展望まで』
菊地正典 著
ダイヤモンド社 刊 2200円(税込)
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