▼「日本語で理解させようという気すら感じさせない記事」。あるニュースサイトでITに関する話題を眺めていると、読者からこのようなコメントが寄せられていた。その記事は弊紙が掲載したものではなかったが、とても人ごととは思えなかった。

▼ITの取材はとにかく難しい。横文字ばかりで、抽象的な内容も多い。間違いを防ごうと、取材先の発した言葉をそのまま書こうとしがちだが、相手の言葉を書き起こすだけでは記事にはならない。取材の内容を再構成し、整理した上で読者に届けることは記者の大切な役目である。

▼記者はAIに奪われる仕事と言われる。確かに取材内容を書き起こす、要約するだけなら、いずれAIに敵わなくなる。ただ、人間は必ずしも理路整然と話してはいない。話のあちらこちらに散らばる情報を選択し、記事としてわかりやすく、読みやすい流れに直す必要がある。これはAIが発展しても難しいのではないか。

▼このような記者による情報整理を「切り取り」と捉える向きもある。そう言われる理由もよく分かる。記事によってどれだけの価値を読者に提供できるか。これまで以上に試される時代になっている。（無）