BOOK REVIEW

<BOOK REVIEW>『もしも世界からカラスが消えたら』

2024/02/16 09:00

週刊BCN 2024年02月12日vol.2002掲載

カラスを見る目が変わる

 自宅から最寄り駅の途中にあるごみ置き場は、ネットを設置しておらず、中身が入っているごみ袋がそのまま置いてある。当然、カラスにとっての格好の獲物になっており、燃えるごみの日は、辺り一面はひどいありさまだ。

 対策をしていない住民側にも問題はあるが、カラスのごみあさりは迷惑極まりない。そのほかにも、糞害や鳴き声による騒音などが問題視されているし、黒い見た目を不気味に感じる人もいるだろう。

 本書は、鳥類学者でカラスを愛する松原始氏が執筆。タイトルの通り、カラスがいなくなった世界はどうなるのかを豊富な知識と独自の視点で考察している。所々に「カラスがいなくても変わらない」などと書かれており、カラスがいなくなったら大きな影響が出るのではないかと期待して読むと少し肩透かしを食らう。ただ、カラスは、自然界だけでなく、人間社会にも地味ながら貢献している面もあり、害鳥だからいなくなってもいいという存在ではないと分かった。

 後半では、「カラスの代役オーディション」を実施。すぐに代役は見つかるだろうと思い読んでいたが、カラスの代役を果たせる鳥はいないという結論になり驚いた。カラスを見る目が変わる一冊だ。(帆)
 


『もしも世界からカラスが消えたら』
松原 始  著
エクスナレッジ 刊 1760円(税込)
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