実社会でもあり得る物語
全国紙の整理記者だった戸倉は、地元に戻り実家の印刷場が発行する地域紙・前崎日報の編集長に就く。記者は自分を含め3人のみ。街のイベントといった緩いネタで紙面を埋める日々の中、市長が何者かに襲撃される事件が起きる。「前崎日報が変わるチャンスかもしれない」と取材に奔走する戸倉は、意外な人物が事件の背後にいることに気づいていく__。
フィクションではあるが、地域紙が廃れ大手の一般紙も斜陽産業と呼ばれる今日の新聞の状況が、実感を伴うように伝わってくる内容だ。デマが飛び交う選挙戦や、「無名より悪名」でSNSを利用しているかに見える政治家など、現実の社会でもあり得る要素が盛り込まれている。
地域に深く根差す地域紙は、他社のような「お客さん」ではないからこそ、信頼され取材を優位に進めることもある。ただ、相手との距離が近すぎると、いつの間にか取り込まれ客観性を失うかもしれない。取材する側とされる側の間合いの取り方は、つくづく難しいと感じた。
タイトル通りニュースは消えてしまうのか、それとも生き残るのか、結論は本書では明かされない。私には、小説でも現実でも、最後は新聞の読み手となる人々の選択にかかっているように思えた。(実)
『ニュースが消える日』
堂場瞬一 著
講談社 刊 2310円(税込)