欲望を映すブランド
「ベンティ・ホットカフェモカ・エクストラミルク・キャラメルソース」。スターバックスコーヒー(スタバ)で使われるカスタマイズ用語の一例だ。スタバファンの多くはこの複雑なカスタマイズの作法を理解し、滑らかに使いこなす。
スタバに限らず、初見の客には難しいルールや所作を覚え、実行することは、それができない他者に対する優越感さえも生む。スタバの場合、消費者はコーヒーそのものだけでなく自己肯定感や承認欲求といった「欲望」を満たすための体験にも対価を払っていると言える。
本書は、こうした消費者の欲望の変遷から現代資本主義社会の形成と展開を読み解いている。
日本マクドナルドの歩みも象徴的だ。1971年に開店した1号店は、海外文化への憧れやハンバーガーの珍しさを背景に、贅沢品として受け入れられた。その後は低価格路線に転じ、「デフレの象徴」とも呼ばれる存在に。牛海綿状脳症の問題や値上げで低迷するも、母親層との対話などを通じて産地情報の開示、キッチン公開といった対策を講じ、ブランド力を回復させた。贅沢品から、安さと早さ、さらに信頼と居心地へ。消費者の欲望に沿ってブランドの在り方を更新する重要性が理解できる。(駄)
『贅沢と欲望の経営史 あなたはなぜ今日もスタバに行ってしまうのか』
坂出 健 著
光文社 刊 1100円(税込)