160年前に3000キロを線でつなぐ
19世紀前半に、欧米ではモールス信号による電報の通信網が急速に整備されていった。1850年には英国とフランスの間のドーバー海峡に世界で初めての海底ケーブルが敷設され、海を越える国際通信が実現した。19世紀後半になると、欧州と北米大陸を約3000キロメートルの海底ケーブルで結ぶという野心的な計画が持ち上がった。当時ともに大英帝国領だった、アイルランド西端のヴァレンティア島と、カナダ東端のニューファンドランド島の間を接続するものだった。
ケーブルの切断など失敗が続き、両島が初めて結ばれたのは1858年の第3回工事。通信品質は劣悪で信号の判別は困難を極め、最初の祝電を北米側へ伝えるのに丸1日を要したという。そのケーブルも、2カ月後には使い物にならなくなってしまった。実用的な大西洋横断電信ケーブルが敷設されたのは1866年の第5回工事で、実に9年がかりの事業となった。蒸気船で片道1週間以上かかる大西洋のやり取りが、リアルタイム通信に高速化された。
インターネット時代においても、国際通信のほとんどは海底ケーブルに依存している。今から160年前、日本がまだ江戸時代・幕末の時期に、欧州ではこれだけの情報革命が起きていたことに驚かされる。(螺)
由来
現在のアイルランドとカナダを結ぶ電信(電報)用の海底ケーブルが、1866年7月27日に敷設された。工事自体とケーブルの品質を確保することに難航し、5回目の工事でようやく成功した。