読書を捉え直す
読書という行為には一口では説明できない奥深さがある。単に情報を収集することだけが目的ならば、生成AIが即座に情報をまとめてくれる現代で、本は必ずしも効率的な情報源とは言えないかもしれない。しかし、本を読むという体験の中には、ある場所で立ち止まったり、同じ場所を行ったり来たりしたりする行為も含まれる。一方的に情報を受け取るだけではなく、自分なりの時間の使い方をしながら、頭に浮かんでは消える考えや、頭に残って消えないアイデアを味わうのもまぎれもなく読書の価値である。
本書では本を読むとはどういうことかを哲学的に掘り下げる。分析の対象とするのは、雑誌やマンガ、レシピ本、楽譜など幅広い。「本を読む」といってもそもそも何をもって「本」だと言えるかは人によってまちまちだからだ。読書を勧める本や、より良い本の読み方を教える指南書は世の中に多くあっても、読書という行為を根本から捉え直そうとする試みは珍しいだろう。
本の中には、書き手が詰め込んだ自由な発想が満ちあふれている。ここからいかに価値を引き出せるかは読み手の技量に委ねられる部分もある。自分の読み方が創造性をはらむものであってほしいと願わずにはいられない。(石)
『本とは何か』
難波優輝 著
新潮社 刊 1034円(税込)