推し活文化は江戸時代と地続き
日本の「推し活文化」を江戸時代までさかのぼって検証したのが本書である。大衆娯楽としての歌舞伎、大正デモクラシーに花開いた宝塚歌劇団、英ロックバンドのビートルズに代表される戦後の欧米文化の流入、1970年代から始まって80年代に隆盛を極めた日本のアイドルやアニメ・ゲームと、それぞれの時代の大衆文化に焦点を当てつつ、推し活文化がどのように醸成され、現在に至ったのかを分析している。
推し活グッズとしてよく売られているタペストリーは、名称こそ西洋の布絵画だが、中身は床の間に飾る「掛け軸」や「のぼり旗」に近く、アクリルスタンドやぬいぐるみ、缶バッジ、フィギュア、うちわなどを飾る「推し棚」は、仏壇や神棚文化の延長線上にあると捉えれば、推し活の根底にある美的感覚や、それを受け入れる土壌は江戸時代と地続きなのかもしれない。
スマートフォンが主要な視聴デバイスとなった今、VTuberや配信者が朝から晩まで配信し、日常生活に寄り添ってくれる。かつての遠くで輝くスターではなく、視聴者にとって身近な存在となり、双方向で誰でも情報を発信でき、バーチャルと現実が融合した“推し”は「まるで『お守り』を身に着ける感覚に近い」と本書は分析している。(寶)
『推したちとどう生きるか』
三宅香帆 著
新潮社 刊 1034円(税込)