副音声で何を流すか
現在の映像メディアでは、左右のスピーカーやイヤホンから別々の音が流れるのは当たり前だが、テレビでステレオ放送が始まったのは今から48年前で、当初は外付けの専用チューナーが必要だった。チューナーの店頭価格は4万円以上したといい、別トラックの音を聞くためだけに、今の物価で考えれば10万円以上の投資が必要だったことになる。
異なる2種類の音声を伝送できる特徴を利用して、副音声で英語の吹き替えなどを流すことも可能になった。NHKの「放送史年表」を見ると、1980年5月31日に当時の郵政省が、副音声に関して日本テレビに厳重注意をしたという記載がある。その前年の衆院選の開票特番で、映像の内容と同期しない当確情報などを副音声で流したのが、放送法違反の「目的外使用」にあたるとされたためだ。しかし、その後副音声の用途制限は段階的に緩和され、プロ野球中継ではネット局が地元チームのファン向けトークを入れる「応援放送」なども登場した。
今は、生成AIによって翻訳字幕の自動生成も可能な時代だ。将来は制作者側でコンテンツのバリエーションを複数用意するより、視聴者側で好みのサブトラックをローカル生成するようになっていくのかもしれない。(螺)
由来
日本テレビ放送網が1978年9月28日、音声多重放送を開始した。NHKよりも3日早く、テレビとしては世界初のステレオおよび2カ国語放送。開始の瞬間には当時の郵政大臣も生出演した。