店頭流通

米アップル社 84年が正念場

1983/10/24 18:45

 米アップル・コンビュータの決算が9月末締めの3ヵ月間で前年同期を下回った。マイナス成長は同社創立以来初めてのことである。これで同社の株は6月の63ドルから23ドルにまで低下、創業者の一人、スティーブ・ジョブズは3億ドル近くも損をしたと伝えられる。しかし、アップルの業績が今後上向くかどうかは、大株主のジョブズだけの関心事ではない。米国のパソコン弄すべての関係者が見守っている。

 いうまでもなく、アップルが現在感じとっているプレッシャーは巨人IBMの影である。IBMが1981年8月に発表したパソコンは、この市場の"創設者"アップルの牙城に着々と食い込んできている。今年中にはIBMはアップルとほぼ互角のシェアをもつようになるだろうと予測されている。IBMの影を否定するわけでなくアップルは陣容の建て直しに必死である。コストを削り、販売・生産体制の集中化をはかる。その中で一際目立つのは、社長にペブシ・コーラの社長であったジョン・スカリーを引き抜いたことである。

 このことはアップルがもはや技術志向の単なるベンチャー・ビジネスではなく、販売重点の大企業へと転身しようとしていることを物語る。アップルの年間売上げは近く10億ドルに達しようとしている。立派なビッグ・ビジネスである。ただ、創業後わずか7年でそれを達成したとなると、いろいろと摩擦も多い。去っていった仲間も多い。だからこそ、自身まだ28歳のジョブズがあえてスクーリーをスカウトするという荒技をみせたのだろう。アップルだけを嵐が襲おうとしているのではない。来年こそ業界全体に強風が吹き寄せるだろう。しかし、アップルがそれを最も認識していることは確かである。(深瀬達朗)
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