店頭流通

パソコン本体 卸価格の値下げ相次ぐ

2002/07/29 16:51

週刊BCN 2002年07月29日vol.951掲載

平均実売価格が低下の兆候

 7月に入り、パソコン本体の平均実売価格が低下傾向をたどり始めた。ショップでは、6月に比べ来店者が増えることに期待、7月末までは現状の価格水準を維持できるものと見ていた。ところがソニーが1部機種の卸価格を下げ、NECと富士通もこれに追随、主要パソコンメーカー3社が揃って価格を下げる結果となった。今回の値下げは、各メーカーが「パソコン市場の活性化につなげる」意味合いで行ったといえるが、「付け焼き刃でしかない」(ショップ関係者)と、厳しい見方もある。

 BCNランキングによると、6月24-30日の週は、デスクトップの平均実売価格が19万6100円、ノートブックで同20万5200円。7月は、デスクトップが19万5300円(7月1-7日)、19万3100円(7月8-14日)、19万2400円(7月15-21日)、ノートが20万6000円(7月1-7日)、20万3900円(7月8-14日)、20万1600円(7月15-21日)で推移。徐々にではあるが、平均実売価格が下がっている状況にある。

 店頭価格の下落は、各メーカーが卸価格を下げたことが要因。7月上旬には、ソニーがデスクトップ型の「バイオJX」とノート型の「バイオFX」の卸価格を1-2万円引き下げた。 7月に入ってからも回復しない需要動向に対し、価格で柔軟に対応するのが狙いという。

 そして7月中旬には、NECがデスクトップとノートともに対抗機種を1-2万円、富士通がノートの対抗機種を1万円程度値下げした。

 コンシューマ市場では、ソニーが値下げで先行し、NECと富士通がこれに追随する格好となった。 これによりメーカー側は、「7月第1週と2週の売れ行きが良くならなければ、価格を下げるしかない」、「卸価格を下げるまでは店頭価格を下げるつもりはない」といったショップに対応した形となった。

 実際、7月に入っても、需要は回復していない。 BCNランキングの前年同週比をみると、デスクトップは、7月1-7日の週が台数ベースで44%減、金額ベースで36%減、7月8-14日の週が台数49%減、金額43%減、7月15-21日の週が台数45%減、金額38%減。

 ノートに関しては、7月1-7日の週が台数37%減、金額34%減、7月8-14日の週が台数41%減、金額38%減、7月15-21日の週が台数32%減、金額29%減という状況だ。

 こうした厳しい現状をにらみ、3社以外でも、現段階で既存機種の値下げは計画していないものの、自社製品の売れ行きが悪くなれば卸価格の値下げに踏み切ることを検討しているメーカーもある。

 これに対し、多くのショップでは、「価格の値下げにより、需要が回復するのであればよいが、値下げした価格は、上昇する前に戻ったに過ぎない。所詮付け焼き刃でしかないだろう」といった冷めた声も多い。

 「今回のモデルは、部材が高騰している時期に生産した製品。在庫が余っているため、卸価格を下げたのではないか」とも分析する。

 「春先の部材高騰にともなうパソコン価格の値上がりは、前機種モデルの価格を値上げしたわけではないため、『価格が上がった』と意識する消費者が少なかったのではないか」という理由からだ。

 また、「価格を下げることが必ずしも売れ行きにつながるとはいえない。メーカーとしては、消費者ニーズにあった製品を出さなければ意味がない。7月に入っても、需要拡大が見込めないのは、夏モデルに新鮮味が欠けたためだ」と指摘する。

 メーカーが価格を下げたのは、「値頃感のある製品ではなかったと暗に認めたことになる」とも強調する。 今年の夏商戦は、国内経済の低迷に加え、サッカーのワールドカップによる予想外の客足の鈍化も響いた。こうした市場動向を踏まえ、今回の値下げは、各メーカーの「何としてでもパソコン市場を活性化につなげる」という判断から実施したものだ。

 だが今後、消費者ニーズをくすぐり、なおかつ値頃感のあるパソコンを、各メーカーが開発できなければ、本格的な需要回復期がさらに遠のくおそれがある。
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