店頭流通

ネット家電市場 家電サポートにビジネスチャンスあり!

2004/04/26 16:51

週刊BCN 2004年04月26日vol.1037掲載

 ネット家電の登場は、コンシューマ向けビジネスを変えるか──。パソコンだけでなく、インターネットに接続できる家電が増え、これらを結んだホームネットワークの世界が次第に現実となりつつある。だが、複数の家電をネットワーク化するとなると、一般消費者の知識レベルではなかなか難しい。そこで、ここにビジネスチャンスがあると、ネット家電のサポートを始める企業が登場している。ホームネットワーク構築というインテグレーションビジネスを見越して、体制を整え始めた企業もある。かつてパソコンのサポートを主戦場としてきた企業が、ネット家電の登場を機に、家電領域にビジネス範囲を広げようとしている。

設置から修理までカバー

 インターネット接続サービス「hi-ho」を運営するパナソニックネットワークサービシズ(PNS)は、加入者向けの新サービス「パソコントラブルアドバイザー」を4月から開始した。パソコンや周辺機器だけでなく、インターネットに接続できるHDD・DVDレコーダーなど、ネット家電を含むあらゆるAV(音響・映像)家電のトラブル対応を、家庭に直接出向きサポートする。

 新サービスは、昨年12月から開始したパソコンと周辺機器だけのトラブルサポートサービス「お悩みバスター」を拡充した。増田健二・企画担当は、「パソコンと周辺機器のトラブル対応だけを想定していたが、実際にはネット家電など、さまざまな家電にまで要求が及んでいる」と、新サービス開始の経緯を説明する。

 PNSはさらに、白物家電やAV機器の設置や修理を行う松下テクニカルサービス(MTS)との協力関係を強め、「hi-ho」加入者に限らず、設置から修理、サポートまで網羅する総合家電サポートビジネスを来年度(2006年3月期)にも新規事業として立ち上げる。「技術の進歩が早いネット家電の扱いに悩むユーザーは予想以上に多い。家電サポート事業は大きなビジネスになる」(増田企画担当)と、期待は大きい。

 日立製作所の子会社、日立ホーム&ライフソリューションは昨年12月、インターネットに接続できる冷蔵庫や洗濯機など、ネット対応の白物家電を自社のホームページや住宅会社などを通じ初めて売り出した。

 「現状では、家電をネットワークで結ぶメリットを模索している状態」(久保達哉・広報・渉外部広報グループ部長代理)というものの、将来的にはAV機器やパソコンなどを無線ネットワークでつなぎ、家庭全体のネットワーク化を支援する事業にまで拡大させる計画だ。「販売が伸びれば、当然ネット家電のメンテナンス・保守に関する人員配置や新たな事業展開が必要になる」(久保部長代理)と、まずは人材教育を急いでいる。

 大手家電メーカーの子会社だけでなく、個人向けのパソコンサポートを手がける企業も動き始めている。パソコン関連のサポートで急成長中のスリープロは、ネット家電の登場を好機と読み、早くもネット家電関連のサポートビジネスを立ち上げた。

 今年4月に大手家電メーカーからネット対応のHDD・DVDレコーダーのサポートを請け負った。スリープロの髙野研社長は、「まだ、製品単体のサポートにとどまっており、ホームネットワーク化や家庭内LAN構築までには範囲は広がっていない」と話すものの、「数年後には、ADSLのように爆発的に浸透し、当社のビジネスもネット家電サポートやホームネットワーク構築が主軸になる」と意欲を見せる。

 スリープロでは、エンドユーザーのサポートだけでなく、メーカーや流通業者、量販店などの販売支援ビジネスも昨年末から開始している。スリープロのスタッフが量販店に立ち、デジタル家電やネット家電の使い方、操作などをエンドユーザーに提案し、拡販を支援するビジネスだ。

 「ネット家電やデジタル家電に特化したスタッフは、1日に200人は動かせる」(髙野社長)。これまで最低1日はスタッフを“缶詰め”にし、製品の機能や特徴を徹底して教育する取り組みを業界に先駆けて行ってきた。「今年度(04年10月期)で、デジタル家電ビジネスを約10億円規模に成長させたい」と、表情は明るい。

 ソフマップの井澤秀夫・店舗営業本部秋葉原営業部副部長は、「ネット家電を購入するユーザーが、設置や使い方に悩んでいることは事実。だが、当社が自らサポートすることはない」とするものの、ニーズが強いだけに「サポートビジネス提供企業と協業する形で、店頭が受付窓口となってサービス提供する可能性はある」と話す。

 テレビのデジタル化、ネット対応のHDD・DVDレコーダーの爆発的な普及に加え、次世代プロトコル「IPv6」も着々と実用化に向かっている。明確な全体像はまだ見えてこないホームネットワークだが、早くもサポートやネットワーク構築で先行者メリットを追求しようとする企業が出てきた。
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