店頭流通

マイクロソフト ホワイトボックス向けにOEM供給

2004/08/23 18:45

週刊BCN 2004年08月23日vol.1052掲載

 マイクロソフト(マイケル・ローディング社長)は今秋にも、AV(音響・映像)パソコン向けOS「ウィンドウズXPメディアセンター2004」を、国内のパソコン量販店が独自ブランドやノーブランドで販売する「ホワイトボックス」の組み立てメーカー向けにOEM(相手先ブランドによる生産)供給する。一部メーカーがOEM調達を決めており、10月後半にはメディアセンター搭載のホワイトボックスが量販店の店頭に並ぶ見通しだ。マイクロソフト日本法人が米本社に積極的に働きかけ実現。大手メーカーのパソコン販売が伸び悩むなかで、新たな需要を求め本格的にホワイトボックス市場へ参入することにした。

AVパソコンOS提供開始

 メディアセンターは、パソコン上でテレビの録画・再生やデジタル音楽の視聴、デジタルカメラの写真データ保存などが楽しめるOS。すでに、富士通やNECなど大手メーカーのAVパソコンに搭載されているが、ホワイトボックス、パーツメーカー向けにOEM提供するのは初となる。

 メディアセンターのOS単体での販売はしない。パソコンに組み込んだ形態か、CPUやメモリ、ハードディスクドライブ(HDD)、マザーボードなどとのセット販売を前提にOEM供給する。これに合わせて、マイクロソフト日本法人では、開発キット「パートナーサポートキット」をOEM先に提供する計画だ。ホワイトボックスメーカーがメディアセンターを使いAVパソコンを組み立てるために必要となるキットだ。

 テレビ機能付AVパソコンが発売されていない米国では、「パソコンにテレビ機能を付加したいというニーズは強く、メディアセンターが急成長している」(米マイクロソフトのウィル・プール・シニアバイスプレジデント)と、今年4-6月期の出荷は前四半期(1-3月期)に比べ120%増えたという。

 マイクロソフト日本法人の香山春明・執行役OEM営業本部長は、「ホワイトボックス市場への拡販に向けて、システムビルダー(ホワイトボックスの組み立てメーカー)へ積極的に話を持ちかけている。その次にパーツメーカーへの働きかけも強化したい。メーカー側からの反応は上々」と、すでに1、2社のホワイトボックス組み立てメーカーとOEM供給で合意しているもようだ。

 これまでパソコン量販店では、テレビ機能を求めるユーザーに対し、ホワイトボックスの卸業者が外付けチューナーやテレビ編集ソフトなどをオプション搭載する形で提供してきた。このため、「コスト面で割高となり、量販店でも粗利がとれない商材だった」(ソフマップの松田信行・総合企画部広報・IR室長)という。メディアセンターが普及すれば、「付加機能が追加され、しかも価格に値頃感が出れば、販売台数は伸びる」(同)と、ホワイトボックスへのテレビ機能搭載に期待する。

 マイクロソフトやインテルから、ホワイトボックス市場の拡販で協力を要請されているパーツ流通・卸のシネックスは、国内大手メーカーのAVパソコンより格安で量販店に卸せる商材が生まれると見る。

 「メディアセンターのOEM供給は、マイクロソフトが国内のホワイトボックス市場に本腰を入れ始めた証拠。メディアセンターとマザーボードなどを一緒にしてホワイトボックスメーカーへ提供したり、メーカーが組み立てたホワイトボックスを量販店に拡販したい」(シネックスの平井寿一・業務部マイクロソフト・インテル製品営業推進グループシニアプロダクトマネージャー)と話す。

 国内のコンシューマ向けパソコン市場は、回復傾向が見られるものの、力強さに欠けるのが現状。量販店は独自ブランドのホワイトボックスや中古パソコン、AVパソコンに活路を見い出そうとしており、その意味でメディアセンターに寄せる期待は大きい。

 マイクロソフト日本法人は今後、ホワイトボックスメーカーにとどまらず、パーツメーカーとのアライアンスも強化していく方針で、AVパソコンの自作ユーザー市場へも“メディアセンター効果”は波及していきそうだ。

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