石井克美のデジタル家電ナビ

<石井克美のデジタル家電ナビ>24.VODサービス普及のポイント

2005/09/26 16:51

週刊BCN 2005年09月26日vol.1106掲載

 「ビデオオンデマンド(VOD)」サービスを満喫する条件には、以前であれば、まず回線速度があった。ところがADSLの普及がきっかけとなって、各家庭の回線速度は飛躍的に向上した。さらにBフレッツなどの光接続サービスや都市型ケーブルテレビ(CATV)の普及で、回線速度の問題は解消されたといってもいいだろう。しかし、以下に挙げられるような課題が普及のボトムネックになっているように考えられる。

(1)プロバイダ

 ヤフーBBが提供する「BBTV」に代表されるISP(インターネットサービスプロバイダ)運用型のVODサービスは、各ISPの利用者にのみに限定されている。言い換えれば、VODサービスがISPの差別化と販促のために利用されているのである。テレビを見るためだけに新たにISPに加入するという家庭はほどんどない、と考えられる。

(2)回線網

 NTT東西のIPv6ネットワークを利用する「オンデマンドTV」は、プロバイダは問わないが、回線網にVODの配信センターが直結しているという構造から、Bフレッツの利用者であることが条件となる。また、IP網ではないが、ケーブルテレビのセットトップボックス(STB)を使って視聴するVODもCATVへの加入が必要であるため、回線縛りの1つと考えられる。

(3)パソコン

 最近では、プロバイダや回線の縛りを排除したVODサービスも登場、USENが運営する「GyaO(ギャオ)」がそれにあたる。完全無料放送というインパクトとブロードバンド回線ならプロバイダや回線網は問わない、という間口の広さから、すでに登録者数は200万人を突破している。ただし「GyaO」の視聴は、あくまでもパソコンがベース。テレビ側のソリューションやIPv6ソリューションとは異なり、このサービスはかつてパソコンがストリーミング技術で夢見た世界を実現したものだ。このほかのVODサービスでも、STBが必要ないものは、視聴にパソコンが必要である。

 現状でインフラの制約もなく、パソコン縛りもないという両方の条件を満たすのは、デジタル・ネットワーク・アプライアンスが提供するVOD「でじゃ」ぐらい。このサービスはプロバイダや回線にとらわれず、「I-DVP」という端末の接続によってテレビで番組を試聴可能だ。

 ただし、このサービスの売りにもなっている「こだわり映像」が若干くせ者。万人受けするキラーコンテンツの構築…。こうした事柄も普及の一助になることは確実である。
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