店頭流通

プリンタの2005年冬商戦スタート 各社、一斉発売でシェア争い白熱

2005/10/10 18:45

週刊BCN 2005年10月10日vol.1108掲載

 コンシューマ向けインクジェットプリンタの2005年冬商戦がスタートした。各社とも、最新の機能を搭載し、プリント速度など性能アップを訴求するなどシェアアップに余念がない。また、複合機も需要を拡大するための重要なアイテムとして販売に力を入れている。家庭で写真を印刷する「ホームプリント」が主流となることで、前年割れが続いたプリンタ市場が今年夏以降から拡大傾向にある。そのため、メーカー間のシェア争いに一段と拍車がかかっている。(佐相彰彦●取材/文)

キーワードは「デジカメ画像のホームプリント」

■10月上旬でラインアップ出揃う“2強”に挑む日本HP

 主要メーカー各社が冬商戦向け製品を発売し、個人向けプリンタ市場のシェア争奪戦が激しさを増している。昨年までは、各社とも販売のピークを迎える12月の年末商戦に向け2-3回程度に分けて新製品を市場に投入するのが一般的だったが、今年の冬商戦は各社それぞれ新製品を一斉に発売してきた。

 最も発売日が早かったのは日本ヒューレット・パッカード(日本HP)。個人向けプリンタの「HPフォトスマート」シリーズでインクジェット複合機を3機種、インクジェットプリンタ2機種、フォトプリンタ2機種を9月28日から販売開始した。しかも、新製品は同社がこれまでに発売してきた製品に比べ同等性能クラスで比較して20-30%割安の価格とし、個人向けプリンタ市場の“2強”であるセイコーエプソンとキヤノンの牙城を切り崩す方針だ。小田晋吾社長は、「HPのプリンタはワールドワイドで40%のシェアがあるにも関わらず、日本では10%のシェアしか獲得していない」と、国内でシェアが低いことを認めており、「プレゼンスの向上が至上命題。何としてでも現状の2倍にシェアを引き上げる」と意欲を燃やす。

 続いて発売したのはキヤノンで、インクジェット複合機「ピクサスMP」シリーズ4機種、インクジェットプリンタ「ピクサスiP」シリーズ3機種を10月5日に発売した。芦澤光二・キヤノン販売常務取締役は、「1年間の販売で約40%を占める冬商戦に全力投球し、市場シェア50%以上を獲得する」ことを狙っており、「今年度(05年12月期)通期では47%のシェア」(同)を目指す。

 最後に販売を開始したのはセイコーエプソン。冬商戦向けに写真対応の複合プリンタ「マルチフォトカラリオ」シリーズ4機種、インクジェットプリンタ「カラリオ」シリーズ2機種、ダイレクト印刷対応プリンタ「カラリオダイレクト」シリーズ2機種、写真専用のダイレクトプリンタ「カラリオミー」シリーズ1機種をキヤノンに対して1日遅れの10月6日から市場に投入した。他社より販売開始日が遅いものの、他社よりも多い9機種をラインアップ。「パソコン専門店や家電量販店などで(他社よりも)展示スペースを多く確保できる」(真道昌良・エプソン販売社長)と自信をみせており、「今回の製品ラインアップで家庭でのホームプリンタからプロ仕様のモデルまでほぼ出揃ったことになる」(同)とし、今年の冬商戦で52%以上のシェアを狙っている。

■複合機もシェア拡大のカギ ホームプリントが主流

 
伸びてきた小型フォトプリンタ
 
 パソコン専門店や家電量販店で、写真印刷専用のフォトプリンタをデジタルカメラコーナーに展示するのが当たり前になってきた。これは、フォトプリンタがインクジェットプリンタや複合機とは性質が異なっているためだ。ショップでは、「プリンタコーナーで展示するよりも売れる」という声が多く、予想以上の売れ行きで品薄状態が続いた製品もあったという。フォトプリンタを購入するのは主婦や学生などが多いという。その多くがパソコンユーザーではないというのも特徴的。メーカー側でも、プリンタの新規需要を獲得するための製品として重視しており、ラインアップを広げるなど販売を強化している。
 シェア拡大に向けて各社が重視しているのは、印刷機能とコピーやスキャナなど複数の機能が付いている複合機をさらに普及させること。真道エプソン販売社長は、「ユーザーはこれまで、単に複数の機能が付いていれば便利なのではないかという漠然とした意識で購入していたといえる。写真印刷をアピールする一方、スキャナ機能を使ってパソコンに写真をデータとして保存するなどの機能を訴えていけば、さらに複合機市場が拡大する」とみている。丹羽憲夫・セイコーエプソン副社長は、「複合機市場は、今夏でインクジェットプリンタ市場全体の40%以上を占めている。用途をさらに提案することで今年冬には60%を超えるだろう。当社では、複合機市場で60%のシェアを獲得している。このシェアを維持していく」考え。

 キヤノンでは、「デジカメ写真を撮って、加工して、プリントして、人に渡すことが楽しいことを訴えるために、出力面でスキャナやコピーも付いた複合機の機能の高さをユーザーに理解してもらうことが重要」(芦澤キヤノン販売常務)という。村瀬治男・キヤノン販売社長は、「写真撮影からプリントまでの入口から出口までトータルに提供しているのはキヤノンだけ」と他のプリンタメーカーとの違いを強調、「デジタルフォト戦略を拡大するためには、単機能や複合機に限らず、すべてのプリンタシェアを高めていく」と意欲的だ。

 今回の冬商戦は、10月上旬で各社の製品が出揃った。各社一斉に発売したのは、年賀状作成需要を取り込むだけでなく、家庭でも手軽に高画質の写真印刷を行うユーザーが年末に限らずプリンタを購入していることによる。

 芹澤キヤノン販売常務は、「ホームプリントの割合は年を追うごとに高まり、現段階ではプリンタユーザーの8割を占めるようになっているようだ」と分析する。丹羽セイコーエプソン副社長も、「昨年までインクジェットプリンタ市場は、前年割れが続いていたが、今年に入り、夏商戦以降は1か月平均で前年同月比10%増前後で推移している。今年の冬商戦もこの傾向が続くだろう」とみており、「市場が拡大しているのは、写真印刷が主流になっているため。プリンタメーカーが訴えていた新たな用途をユーザーが理解してくれている証拠」とアピールする。そのため、例年よりも早い時期に新製品のラインアップを揃え、各ユーザーが適した製品を購入できる環境を整えたというわけだ。
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