秋葉原は今

<秋葉原は今>1.集客増でショップの変貌が始まる

2005/11/21 16:51

週刊BCN 2005年11月21日vol.1114掲載

 東京都や千代田区によるJR秋葉原駅前の都市再開発が進むなか、東京・秋葉原電気街が大きく変貌を遂げつつある。2005年になってからは一段と集客力が上がってきた。

 今年8月26日、首都圏新都市鉄道による「つくばエクスプレス」が開通。JR3線と東京メトロ日比谷線の計4線だった時と比べ、秋葉原駅の利用客は約20%は増加した。しかも、つくばエクスプレスが茨城県つくば市まで延びたことから、秋葉原地区のショップにとっては鉄道による商圏が一気に広がったのは間違いない。秋葉原地区の課題となっていた駐車場も充実。駅前のコインパーキングなどが設置されることで、車での来訪者も増えているようだ。

 さらに、日本最大級の売場面積を誇るヨドバシカメラの「マルチメディアAkiba」が9月16日にオープンしたことで、休日になると家族連れの来訪が目立つようになっている。ほかにも、駅前にそびえ立つ超高層ビルの「秋葉原ダイビル」が本格稼働し、コンベンションホールで開催されるイベントや、同ビルの主要機能である産学連携でIT関連企業の関係者が集まる機会も多くなった。

 駅前の再開発で街の集客が上がったことに加え、幅広い客層が新規に訪れる傾向が高まっている。かといって、電気街のメインユーザーであるパソコンマニアをはじめ、アニメやフィギュア、コスプレ喫茶などの“おたく”の来訪が減少しているわけではない。さまざまな“顔”を持つ街として栄えつつあると言えるだろう。

 こうした状況を踏まえ、これまで扱ってこなかった商材を販売することで新しい顧客を獲得することに力を入れ始めた家電量販店、組立パソコン用パーツの品揃えを一段と充実させて既存ユーザーを囲い込むための策を徹底するパーツショップなどが出てきている。電気街は、パソコンマニアだけが訪れる街ではなくなり、どのようなユーザーでも受け入れる街へと進化している過程にある。一方で激しい競争の最中、閉鎖を余儀なくされた店舗もある。街の集客が一段と高まれば、今後はさらに勝ち負けの構図がはっきりと浮かび上がってくるだろう。

 駅前の再開発を中心に秋葉原地区全体が世界屈指のIT拠点に生まれ変わろうとしている。電気街の家電量販店とパソコン専門店が店舗のリニューアルや業態変更を積極的に行うなど、時代の流れに乗ろうと模索している。各ショップの生き残りをかけた戦いが、今まさに始まろうとしている。(佐相彰彦)
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