店頭流通

松下・シャープが相次いで大型投資 薄型テレビの覇権かけ大増産体制へ

2006/01/23 16:51

週刊BCN 2006年01月23日vol.1122掲載

 デジタル家電の主役のひとつ、薄型テレビを巡って新年早々から大型投資計画が相次いでいる。松下電器産業(中村夫社長)は1800億円を投じ、兵庫県に年産600万台(42型換算)と世界最大のプラズマディスプレイパネル(PDP)生産工場を建設、2007年夏の稼働を目指す。一方、液晶テレビの主役・シャープも、建設中の三重県・亀山第2工場に2000億円を追加投資し、08年には2000万台(32型換算)を超える生産体制を整える。

 薄型テレビに関しては、韓国や台湾メーカーも生産能力拡大を表明しており、両社は強力なコミットメントを発信することで、覇権を勝ち取っていく考えだ。

 これまでも、松下電器はPDPについて語るとき、極めて雄弁になる傾向があった。今回は、石油ファンヒーターの不具合で、元気が削がれていただけに、まさに沈滞ムードを跳ね返すような感じ。

 新工場は、大阪府茨木市の第1工場比で4倍以上の投資効率があり、08年のフル生産時には年間1110万台の生産体制が整う。これを背景に2010年に2500万台とみられる市場において「40%以上のシェアを確保」(大坪文雄専務)する考えだ。日本市場はもとより、欧米や中国などでも市場の急拡大が予想され、世界同時の「垂直立ち上げ」戦略をとってきた松下電器だけに、タマ(商品)をきらさないためには、生産能力拡大は不可欠となっている。

 シャープも同様だ。町田勝彦社長は「大変な供給不足で迷惑をかけており、(供給能力を高めねば)メーカーとしての姿勢が問われ、信用問題にもなる」と指摘する。1年前、三重第2工場の立ち上げを発表したころは、社内に慎重意見があったことを匂わせていたが、いまやちゅうちょはみられない。薄型テレビの需要が、年間10-15%で伸びるということを確信したということだ。

 一方で、世界市場を展望すると、海外勢の力は侮れない。薄型ディスプレイからの撤退や縮小を表明する企業も出てきているが、覇権を争うライバルたちは、価格競争も見据えた生産効率の向上と大型投資に積極的。

 PDPと液晶でイニシアチブをとってきた両社といえど、漫然とした量的拡大では対抗できない。フルスペックハイビジョン対応などの商品特性で自信を示す町田社長も「規模が大きく技術力のあるところが最終的に勝つ。むやみに能力を増やしているのではない」と言い切る。

 事業採算の点からは、シャープですら単純機能のテレビについては、外部企業からパネルを購入することも検討しており、今年度内には実施したい考え。薄型テレビで覇を競うには、明確な世界戦略を持たねばならないということだ。

 相次ぐ生産能力強化は、メーカーの市場分析を示し、そこで必要とされる技術や市場へのコミットメントを示すロードマップであり、情報戦略の大きな要素となってきている。
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