臨界点

エプソン販売 取締役コンシューマ事業部長 田場博己

2006/06/19 18:45

週刊BCN 2006年06月19日vol.1142掲載

 エプソン販売は昨年9月、DVDプレーヤー一体型プロジェクタを発売した。「この製品自体がソリューション」となり、市場拡大に貢献した。ホームプロジェクタ市場については、「メーカーの提案次第で伸びる」と言い切る。昨年度は、対前年度比20%増を達成。今年度はさらに拡大すると見込んでおり、「30%増は十分可能」と自信のほどをのぞかせている。 田沢理恵 取材/文 清水タケシ 写真

ホームプロジェクタはまだまだ伸びる 積極的な提案ですそ野を広げていく

 ――プロジェクタ市場で圧倒的なシェアを獲得している。

 「販売は絶好調だ。爆発的に売れている。昨年9月にDVDプレーヤー一体型という新機軸を打ち出したが、これについては手応え十分だ。プロジェクタ市場全体でも2005年度は前年度比10%程度成長したが、当社はその倍の20%増を達成した」

 ――成長した要因は。

 「ホームプロジェクタに限っていえば、メーカーの働きかけによって市場は伸びると考えている。プロジェクタは、実際に体感してみないと良さがわからない。そのため店頭で体感してもらう環境づくりに力を入れた。また、メーカーの働きかけというのは、販売するだけでなく、コンセプトを含めて市場に送り出すということ。市場が拡大したのは、当社の狙い通り、ユーザーの心をつかんだためだと理解している」

 ――ホームプロジェクタは趣味性の高いものというイメージが強い。狙い通りとは。

 「テレビは日常的なものだが、プロジェクタは非日常を演出できるものだ。テレビと比べると市場はニッチではあるが、プロジェクタを使ってDVDを見たり、テレビの出力端子とつなげてスポーツやテレビ番組を見るなど、テレビとは一味違う感覚で非日常を楽しめる。店頭で体感すると、良さに気づいて購入してくれる顧客が多く、当社の思惑通り、すそ野を広げられた」

 ――具体的にどのようなユーザーを獲得できたのか。

 「新コンセプトを打ち出したDVDプレーヤー一体型は、従来機種と比べて煩わしいケーブルの接続を減らしたこともポイントだ。また、スクリーンとのセット商品も展開している。必要なものを1セットにしたこともひとつのソリューション提案といえるだろう。これらの取り組みにより、従来は30-50代の男性ユーザーが多かったのが、女性層にも受け入れられるようになった。現在、DVDプレーヤー一体型については、20-30代のユーザーが多く、また、女性層が20%を占めている」

 ――さらにユーザー層を広げるには。

 「年齢、性別にかかわらず、ビジュアル画像を楽しみたいというニーズは幅広いはずだ。こうした楽しみ方をまず体感してもらう場所を増やして、潜在需要を掘り起こす。現在、約400店舗で体感できるようにしているが、今年度中には全国500店舗に拡大したいと考えている。また、店頭以外でもウェブサイトなどで使い方の提案を強化していく方針だ」

 ――すでに市場全体の半数以上のシェアを獲得している。今後の目標は。

 「シェアの数字は考えてない。なぜかといえば、メーカーの提案次第で市場は伸びると考えるからだ。傲慢な発言だと受け取らないでいただきたいが、製品の企画から販売先のアプローチを含めて手を打てば打つほど、それが市場創出につながる。今年は最低でも前年度比30-35%増を目指す。こちらのアクション次第で市場は拡大すると考えており、30%増は十分可能だ。製品本体では、使い勝手の向上のほか、無線LANへの対応も検討課題だ。コンスタントに新機軸を打ち出し、斬新な商品を市場に投入していくつもりだ」

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■圧倒的シェアで市場をリード

 プロジェクタ市場は、セイコーエプソンがメーカー別シェア50%以上を獲得し、トップを維持している。5月の製品別シェアでは、エプソンのDVDプレーヤー一体型でスクリーンがセットになっている「EMP-TWD1SP dreamio」(平均実売価格12万6798円)が首位。1-3位までエプソンの製品が占めており、その1-3位の販売台数シェアトータルは46.4%。圧倒的に優位に立っている。

 エプソンは、ホームプロジェクタ「dreamio(ドリーミオ)」シリーズで、上位機種の「EMP-TW600」、エントリーモデルの「EMP-TW20」、DVDプレーヤ一体型の「EMP-TWD1」を展開。販売構成比の約55%をDVDプレーヤー一体型の「EMP-TWD1」が占めているという。ホームプロジェクタ市場は、「メーカー側の提案次第で拡大できる」と確信している。そのことを裏づけたのが、「EMP-TWD1」の投入だったといえるだろう。

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