臨界点

ラシージャパン 代表取締役社長 モンターグ・アレクサンドル

2006/09/18 18:45

週刊BCN 2006年09月18日vol.1154掲載

 首都圏を中心にした家電量販店では、フランス生まれの周辺機器メーカー、ラシージャパンの外付けHDDの陳列が目立つ。元々、プロフェッショナル向け製品として、マック・ユーザーに浸透。大容量でありながら、デザイン性が高く、異彩を放ち、コンシューマにも受け入れられた。量販店では、国産メーカーの低価格製品が高いシェアを獲得しているが、HDDの容量が上がるほど、コストパフォーマンスが上がるというラシー製品は、粗利の大きい商材として量販店の支持を得ている。 谷畑良胤 取材/文 大星直輝 写真

デザイン性重視の外付けHDDで攻勢 粗利高く、量販店の支持を得る

 ――プロフェッショナル向けでありながら、家電量販店にも進出しているが。

 「5年前に日本市場に参入した当初は、コア顧客である映像や音楽などプロフェッショナルを抱える業界を中心に開拓し始めた。ただ、日本は他国と異なり、プロ業界の人たちは、青山や新宿など都心に集中している。そのため、首都圏に店舗をもつ家電量販店のマッキントッシュ・コーナーに当社製品を置くことにした」

 ――最近、都内の量販店には、ラシー製の外付けHDDが大量に陳列されている。

 「2-3年前に『ポルシェデザイン』の外付けHDDの販売を開始し、コンシューマに近くなった。プロ市場で培った高い技術力やパフォーマンスをコンシューマにも提供するため、デザイン性を重視した製品をラインアップ。また、生産工程をシンプルにし、低価格な製品を出せるようになり、量販店での扱いが増えた」

 ――大容量の外付けHDDを低価格で提供できる理由は。

 「(親会社の)仏国ラシーは、世界のメーカーから、内蔵するHDDを最も多く購入している。HDDを安く買う力がある」

 ――日本市場では、低価格製品を売りにしたメーカーが強力だ。ラシージャパンは何を特色に対抗するのか。

 「コンシューマへのアピールとしては、まず第1はデザイン性。最近発売した、世界的に有名なデザイナーが手がけた『Brick Desktop Hard Drive』(250-400GB)は、遊び心を取り入れ、積み重ねて置くとデスクの装飾になる。しかも、大容量で低価格なので、好評だ」

 ――今年5月には、ファンレスの外付けHDDを日本市場に投入した。

 「元々、音楽業界から『音が出ないHDDが欲しい』という要望を受け、初めてファンレス製品として開発した。ファンレスにするには、冷却に必要な素材が重要。ワッフル状のアルミ合金をケースに採用し放熱効果を高め、音を抑えた」

 ――BCNランキングによると、ベンダー別では、台数ベースで4位。低価格製品でもっと上位を狙おうという考えは。

 「国産メーカーは、低価格製品を大量に販売しているが、儲かってはいないと思う。当社はストレージがメインなので、追随はせず、妥当な値段で提供していく」

 ――量販店がラシー製品を大量陳列する理由は単価が高く、粗利が高いから?

 「その通りだと思う。ただ、量販店にはデザイン性が高く売りやすいという評価を得ている。だから、“かっこいい”製品をどんどん出している。150-240GBの領域では、国産製品のほうがコストパフォーマンスは高い。一方、容量が増えるほど、当社製品が有利になる」

 ――今後も製品ラインアップは増やしていくのか。

 「年末に向けて、より大容量の製品を複数出して、販売を積極化する。仏国ラシーは競合メーカーが日本に比べ多い欧米で高いシェアを獲得している。価格が正常化すれば、日本で1位を狙える」

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■2強の牙城を崩せるか

 外付けHDD市場は、バッファローとアイ・オー・データ機器の上位2社でシェア85%以上(台数ベース)の「2強体制」が築かれている。BCNランキングによれば、8月単月(8月1-31日)の上位7機種は、両社の160-300GB(1万-1万5000円)の製品で占められている。

 最近は、音響・映像、画像など、大容量のデータを保存するユーザーが増え、容量の大きい外付けHDDが売れ筋となりつつある。そのなかで、ラシー製品は、「ポルシェデザイン」のHDD(250GB)が機種別で60位台に位置している。上位2社の同等製品より、平均単価で5000円程度高いながらも健闘している。

 外付けHDD市場の価格競争はいつまで続くのか不透明。その状況下で、ラシー製品がどこまでシェアを伸ばすか注目される。

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