店頭流通

インクジェットプリンタ市場 低価格モデルの比率高いエプソン キヤノンはインクの消費を狙う

2007/06/18 16:51

週刊BCN 2007年06月18日vol.1191掲載

 キヤノンとエプソンのインクジェットプリンタ事業に大きな差が現れている。BCNランキングによると、キヤノンは、1-2万円台の特定機種への集中傾向が強いのに対して、エプソンは、1万円以下の価格帯および3万円以上の高価格帯での販売比率が高く、幅広い製品ラインアップで対抗している格好だ。

 BCNランキングによると、エプソンのインクジェットプリンタでは、1万円以下の製品構成比率が、過去半年以上にわたって、約15-20%で推移している。進入学需要および年度末需要が旺盛だった3月の集計では18.3%、4月15.6%、5月14.0%の構成比となっている。

 これに対して、キヤノンでは1万円以下の構成比が5%前後で推移。同様に3月の集計では3.8%、価格下落が進展した4月7.5%、5月6.9%と、エプソンの半分の構成比だ。

 一方、エプソンの製品構成比率は高価格帯でもキヤノンとの差がみられる。5月における3万円以上の価格帯では、エプソンは8.3%であるのに対して、キヤノンは5.0%となっている。

 キヤノンは主力のPIXUS MP600を重点機種とした展開であるのに対して、エプソンは低価格帯から高価格帯まで幅広い製品ラインアップで展開していることの違いが出ているともいえそうだ。

 エプソンが1万円以下の価格帯で主力としているのは、2005年10月に発売したPX-V630やPM-G730。旧機種を継続販売することで、低価格需要を獲得している。

 エプソン販売では、この取り組みを次のように説明する。

 「パソコンとのセット販売用として、低価格モデルが欲しいという要求が販売店から出ており、そうした商材として用意したもの。これが結果として、1万円以下の価格帯での構成比が高いことにつながっている」

 エプソンは、06年度からスタートした中期経営計画「創造と挑戦1000」において、インクジェットプリンタのプラットフォームの見直しや、プリントボリュームが少ない低価格機種を絞り込む方針を掲げているが、国内における低価格モデルへの需要や、中国などの新興市場への展開を考えると、継続的な低価格モデルの戦略的展開が含まれることになりそうだ。

 キヤノンマーケティングジャパンでは、「当社は、ユニットシェアを追求することよりも、インクの消費量を含めたビジネスを重視する」と、ライフサイクル重視型の事業方針を示し、低価格モデルの比率を引き上げる考えはもっていない。

 インクジェットプリンタ事業において、両社の戦略には、微妙な差が出ており、これが今後の製品戦略に反映されることになりそうだ。
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