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インクジェットプリンタ4社 多彩な機能で操作性を追求 印刷ニーズの喚起がカギを握る

2010/10/14 18:45

週刊BCN 2010年10月11日vol.1353掲載

 年末の年賀状需要に向けて、8~9月、主要メーカーがインクジェットプリンタの新製品を発売した。各社の製品の特徴からみえる今年のトレンドは、「使いやすさ」。ボタンが光って操作手順を案内する、PCがなくてもプリンタ本体だけで印刷できるなど、デジタル製品に詳しくないユーザーでも簡単に使うことができる機能を盛り込んでいる。


 インクジェットプリンタ「ピクサス」が、誕生10年目を迎えたキヤノン。これを機にロゴを刷新し、製品をフルモデルチェンジ。6モデルを発表した。上位2モデルにはタッチパネル式のボタンを装備し、印刷やコピーの操作手順を発光して知らせる機能を備える。「高付加価値を提供することでシェア50%程度を狙える」(佐々木統・専務取締役コンスーマイメージングカンパニープレジデント)と強気だ。

 セイコーエプソンは「カラリオ」で、複合機5モデルと単機能機1モデル、フォトプリンタ2モデルを揃える。上位2モデルにはタッチパネル式のボタンを搭載。また、4モデルはキヤノンと同様、操作手順をボタンが光って知らせる機能を備えている。「もうプリンター選びに、迷わない」をコンセプトに掲げる。キヤノンとエプソンは、誰でも簡単に使えるよう、操作性を向上するという堅実な製品戦略をみせる。

 一方、ワールドワイドでトップシェアをもつ日本ヒューレット・パッカード(日本HP)は、PCなしで印刷できる新機能、「メール de プリント」と「アプリ de プリント」を「革新的な技術」(挽野元・執行役員イメージング・プリンティング事業統括)とアピールする。「メール de プリント」は、プリンタに付与したアドレスにメールを送信すれば印刷ができる機能。また、「アプリ de プリント」は、クラウド上にあるコンテンツにアプリケーション経由でアクセスして印刷する機能だ。複合機4モデルで、シェア向上を狙う。

 ファクス付きの複合機に強みをもつブラザー工業は、新機能として、無線でファクスを送受信する新シリーズ「マイミーオフリー」を投入。電話子機の充電器を兼ねた通信ボックスを電話線につなげば、室内のどこにでもにプリンタを設置できる。子機付き複合機8モデル、ファクス付き複合機1モデル、複合機2モデルをラインアップし、主要メーカーのなかでは最も多い製品数で勝負する。日本HPとブラザーは、独自機能を前面に打ち出すことで他社との差異化を図る。

 インクジェットプリンタ市場は、キヤノンとエプソンの二強体制が長く続いている。「BCNランキング」8月のメーカー別販売台数シェアは、キヤノンが44.2%、エプソンが40.6%だった。今後、スマートフォンやスレートなど、大画面で文書や画像を閲覧できる端末の台頭によって、紙の印刷量が現在よりさらに減少する可能性がある。各種端末からの印刷はもちろん、デジタルカメラの写真など、ユーザーの潜在的な印刷需要を業界全体で喚起していくことが、市場伸長のカギを握るだろう。(井上真希子)
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