デジタルトレンド“今読み先読み”

スマートフォン、いざ海外へ フィーチャーフォン化で差異化

2011/06/02 16:51

週刊BCN 2011年05月30日vol.1384掲載

 携帯電話キャリアからスマートフォンの夏モデルが発表された。すでに発売となった製品もあるが、多くの製品が6月の発売で、商戦が本格化するのは7月以降になりそうだ。今年のスマートフォン夏モデルの特徴は、一般の携帯電話(フィーチャーフォン)に満載している赤外線通信などの機能が、ついにスマートフォンにも搭載されること。世界標準とはかけ離れ、国内仕様として独自の進化を遂げたために「ガラケー(ガラパゴス携帯)」など揶揄されてきたこれらの機能を、逆に差異化の武器にして、携帯電話メーカーは海外事業の拡大を狙っている。

サービスの拡充を進めるキャリア

 携帯電話キャリアのNTTドコモとKDDIは、ともに携帯電話の夏モデル発表記者会見で、スマートフォンに軸足を置くことをアピールした。NTTドコモの山田隆持社長は、「スマートフォンは、携帯電話事業を引っ張っていく大きな存在だ。夏モデルとして9機種を発売した。春モデルと合わせて12機種が揃い、iモード端末(フィーチャーフォン)と同じラインアップ数になった」と説明。KDDIの田中孝司社長は、「今年は、いかにスマートフォンを広げていくかがカギ。利用者のすそ野を広げていく」とした。

 携帯キャリアがスマートフォンの訴求で力を入れているのがサービスだ。NTTドコモは、2011年冬までにフィーチャーフォンとスマートフォンのサービスを統合する計画で、夏には地震など緊急速報を受け取ることができる「エリアメール」がスマートフォンに対応するほか、ニュースなど日常の情報がテロップで流れる「iチャネル」が利用できるようになる。スマートフォンのコンテンツが薄型テレビで視聴できるなど、AV機器と連携するDLNA対応アプリ「Twonky Mobile Special」も提供。冬には課金・認証の仕組みをスマートフォンに追加する。

 KDDIも、これまでフィーチャーフォンで提供してきたサービスを、Androidスマートフォンに標準で搭載し始めている。夏モデルの全機種が緊急地震速報に対応し、秋には携帯メールやau同士のメール「Cメール」を利用できるようにする。また、アプリの料金などを携帯電話料金と一緒に支払うことができる「auかんたん決済」の提供や、Androidアプリの販売サイト「au one Market」を連動して使えるようにする。さらに、ネットワーク環境として、スマートフォン向け公衆無線LAN「au Wi-Fi SPOT」を6月末に開始。これはWi-Fiと3Gを自動で切り替えるサービスで、来年3月末までに約10万か所のWi-Fiスポットを設置する計画だ。

相次いで発表されたスマートフォンの夏モデル

世界で勝つための機能拡充へ

 キャリアによるサービスの拡充と同様に、携帯電話メーカーも端末の機能やサービスの拡充を進めている。

 NECカシオモバイルコミュニケーションズは、薄さ7.9mmの防水スリムモデル「MEDIAS WP N-06C」と、耐衝撃と防水・防塵性能を備えたタフネスモデル「G'z One IS11CA」を発売。同社の田村義晴社長は、「スリムボディの『MEDIAS』とタフボディの『G'z One』は、独自の技術を生かした世界レベルのスマートフォン」と自信をみせる。この2機種を武器に、「今年度(2012年3月期)は、携帯電話の出荷台数として国内外合わせて740万台を目指す」と、前年度の1.7倍近くを目標に据える。スマートフォンの比率は公表しなかったものの、「スマートフォンが成長することは間違いない」という確信を口にした。

 シャープは、夏モデルとして6機種を発売。加えて、「他社との明確な差異化」(大畠昌巳・執行役員通信システム事業本部長)を目的にブランドを「AQUOS PHONE」に統一したほか、液晶テレビ「AQUOS」とHDMIで接続することで、AQUOS PHONEに収録した動画やゲーム、コンテンツを大画面で楽しめたり、ネットワーク規格のDLNAにより、BDレコーダーで録画したテレビ番組を「AQUOS PHONE」で視聴できたりするAV機器との連携を強化した。今後は、DLNAによって簡単操作でスマートフォンのコンテンツをAQUOSに映し出すことや、メールの送受信をAQUOSで確認できるようになる。大畠事業部長は、「今年度は、国内で(前年度の2.5倍にあたる)500万台を目指す」としている。

 当面は国内で需要を掘り起こしていくわけだが、携帯電話メーカーの狙いは海外での事業拡大にある。NECカシオモバイルは、「『G'z One』は北米で発売しており、販売は好調」(田村社長)。シャープは、「中国市場では、フィーチャーフォン的なスマートフォンも発売していく」(大畠事業部長)という方針だ。富士通東芝モバイルコミュケーションズの大谷信雄社長は、「海外で勝つためには、他社にはない技術を生かさなければならない。フィーチャーフォンで蓄積した機能をニーズに応じて搭載していくことが重要になる」との考えを示している。

 キャリアとメーカーともに、サービスの拡充での国内需要の掘り起こしを進めることに加え、メーカーはスマートフォンで海外市場に改めて挑戦する。海外ではグローバルメーカーが先行しているが、これから先の差異化ではサービスや端末機能がポイントになってくるだろう。他国のメーカーにはない、フィーチャーフォンの機能が入った「ガラスマ」が世界市場を席巻する日は近いかもしれない。(佐相彰彦)
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