これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「オルツ・米倉千貴代表取締役」を取材しました。
P.A.I.を社会に浸透させる
経営者として、最初に設立したのはグラフィックやゲームなどのサービスを展開する企業だった。「起業して10人雇ったら10倍の売り上げにしなければ効率が悪い」と考えていたが、100人規模の会社になっても売上高は5倍にとどまり、生産性の低さが課題となった。
生産性を上げるためにAIの活用に踏み切った。まずは、自ら行っていた人事などの業務の自動化を目的に、自身の考えと同じように判断するAIを開発。シンプルなものだったが、大きな効果を得た。その経験から、人間の意思や判断をデジタル上のクローンとして再現するAI技術「P.A.I.(パーソナル人工知能)」を社会に浸透させたいと考え、全事業をバイアウトし、オルツを新たに創業した。
エキスパートとして活躍
技術の進化により、代替できる業務が増えているため、その部分の仕事しかできない人の価値は縮小化し、反対にエキスパートの価値がどんどん上がっていくと見ている。だからこそ、P.A.I.を活用することで、非生産的労働をなくし、「人が行うからこそ価値がある仕事」に集中できる世界を実現し、誰もがエキスパートを目指せるようにしたいという思いがある。そのためには、自社が体現することが重要となる。社員にはエキスパートとして活躍することを常に求めてきた。
会社がエキスパート集団となったことで、研究開発は大幅に進んでいる。「国内でもここまでやっている会社はなかなかない。今は焦らず自分たちの研究を深めていくのが大事」と自信を見せる。
世界を代表する企業に
自社のAI技術を活用した会議議事録の自動文字起こしツール「AI GIJIROKU」をSaaSで提供しており、利用企業は5000社以上となった。だが、SaaSは、長期的なビジョンの実現に向けた戦略の一部であり「目標の1%も達成していない。GAFAM=米Google、米Amazon、米Facebook(現Meta)、米Apple、米Microsoft=を超えるような企業を目指したい」。
大きな目標の達成のために、「まずは、P.A.I.の開発を進め提供し、自分の生活が楽になった、便利になったと実感できる人が出てくる環境をつくらなければならない」と力を込める。
プロフィール
米倉千貴
愛知大学在学中にメディアドゥに参加し、2001年、取締役に就任。04年に独立し、コンテンツプロデューサーとして活動。06年、グラフィックやゲームなどのサービスを手掛ける未来少年を設立。14年に全事業をバイアウト。同年11月、オルツを設立。
会社紹介
P.A.I.(パーソナル人工知能)の開発・提供および人工知能や人工知能関連技術の研究・開発などを手掛ける。SaaS型会議議事録の自動文字起こしツール「AI GIJIROKU」や音声対話AIソリューション「AIコールセンター」といったサービスも展開。