これからの時代(Era) をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「Shippio・佐藤孝徳代表取締役CEO」を取材しました。
物流危機が海運にも押し寄せる
横浜市に生まれ、港に出入りする巨大な貨物船を眺めて育った。総合商社で10年勤め、「島国日本の物流は海運で支えられている」ことを実感する。実際、国際貿易の貨物は重量ベースで99%を海上輸送に依存しているにも関わらず、就労人口の減少による物流危機は海運業界にも容赦なく襲いかかる。
「なんとかしたい」と考えて、海運業界の業務をデジタルの力で効率化、省力化する会社のShippioを立ち上げた。しかし、歴史と伝統のある海運業界に対し、ITスタートアップ企業がクラウド化やSaaS活用などを訴えても「なかなか耳を貸してもらえなかった」と壁にぶつかる。
自らショールームの役割果たす
であれば、「自らデジタルをフル活用した海運会社を立ち上げてショールームの役割を担う」とフォワーダー(貨物利用運送事業)に参入する。さまざまな船会社の船を利用して貨物運送を手掛けるビジネスで、ITスタートアップ企業が新規参入するのは極めて珍しい。デジタル技術を活用していることをアピールする狙いを込めて、日本初のデジタルフォワーダーと銘打った。
念願のクラウドサービスを製品化
フォワーダー事業ではコンテナ定期船の運行状況や見積もり、貿易関連の書類など一連のデータを一元的に管理できるクラウドサービスを荷主に提供。これまで当たり前のように行われてきた荷主とフォワーダーの電話やファクスのやり取りをなくし、情報共有をオンラインで完結することで業務量の半減を可能にした。2022年には、フォワーダーとしてより大きく成長するため、老舗の海運会社である協和海運をShippioグループに迎え入れている。
デジタルフォワーダーで培った業務ノウハウと実績の集大成として、23年1月に「Any Cargo」をリリース。荷主とフォワーダーのやりとりをクラウド上に集約することで業務を可視化した。「海運業界の業務デジタル化を促進し、物流危機を乗り越えるプラットフォームに育てていく」と熱っぽく語る。
プロフィール
佐藤孝徳
1983年、横浜市生まれ。2006年、中央大学総合政策学部卒業。同年、三井物産に就職。16年、サークルイン(現Shippio)を創業。
会社紹介
海運事業のデジタルフォワーディングと、クラウドサービスの「Any Cargo(エニーカーゴ)」を手掛ける。グループ従業員は約100人。老舗海運会社の協和海運をグループ傘下に持つ。