これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「リードインクス・柏岡 潤代表取締役社長兼CEO」を取材しました。
上流から伴走し製品を設計
あらゆる業界でDXが進む中、保険業界は規制が厳しく、デジタル化が立ち遅れていると感じた。保険は人による対面販売がほとんど。保険会社は旧来型のシステムでビジネスを行っており、新しい製品を企画して販売するのに長い時間とお金がかかっていた。保険業界にテクノロジーを持ち込み「今までにない保険体験をつくる」ことを目指す。
消費者のニーズに刺さる保険をつくるには、スピード感が必要だ。商品企画など上流からコンサルティングに入り、最適なシステムを提供。インフルエンザ保険、熱中症保険など、タイミングに合わせ最適なアプローチができる商品を生み出してきた。
欲しくないけど必要なもの
エンドユーザーが保険を買いやすくする仕組みづくりにも注力する。例えば、旅行時に旅行保険に加入するには、通常保険会社のサイトで新たに個人情報を入力する必要がある。このハードルを下げるため、2024年10月に国内大手航空会社が、リードインクスが提供する保険販売システムを導入。航空会社のアプリケーション内で簡単に旅行保険に加入できるようになった。銀行のアプリに保険販売システムを組み込んだ事例もある。
「保険は欲しいから買う商品ではない。でも必要なもの」との思いが根底にある。必要になる場面で最適なものを選べるよう、アプローチの精度を高める意義を感じている。
日常の中にビジネスの種
保険販売をデジタル化することで生まれる商機は大きいとみる。ランドセルを買った人には学資保険が売れるかもしれない。自転車を買った人には自転車保険を勧められる。「タッチポイントの販売データと掛け合わせた提案はあらゆる業界向けに可能だ」
経営者として心掛けているのは「1人の意見は全体像ではない」という思いを持ち続けることだ。より多くの人に会い、話を聞く。フットワークの軽さは「(会社の)トップらしくないと言われる」こともあるというが、「一次情報に触れないと本質は分からない」。日常の中にこそビジネスの種があると信じ、ようやく緒に就いた保険業界のDXを先導していく。
プロフィール
柏岡 潤
1984年生まれ、横浜市出身。慶應義塾大学卒業。2006年、ソフトバンクBB(現ソフトバンク)に入社。代理店営業と法人営業に従事。18年から保険とテクノロジーを融合するインシュアテック事業を担当。20年、社内スタートアップとしてリードインクスを創業。
会社紹介
保険業界のDXを推進するサービスを展開。保険会社向けシステム「Graphene/Nano」は、保険基幹システムの全機能をオールインワンで提供。保険代理店向けシステム「Fusion」は、自社チャネルにおいてデジタル保険の販売を可能にする機能をSaaSで提供する。ソフトバンクの100%子会社。