これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「ROUTE06・松本 均取締役/共同創業者」を取材しました。
上流工程の属人化を解消
SIerでのエンジニア経験、事業会社でデータ部門の担当などキャリアを重ねてきた。その中で感じた課題が、ビジネスの高度化に伴ってシステム開発の上流工程を担当できる人材が不足していることだった。
要件定義がうまく進まないのは、開発側が顧客の課題を正確に把握できないのが原因だと分析。「事業部門とIT部門の翻訳が必要で、認識合わせのためのミーティングが増えてしまう」。できる人間が限られ属人化している現状を変革するため、開発プロセス全体をAIで自動化・標準化する製品を展開している。
要件定義を自動で
システム開発の現場では、コード作成にAIを活用するなど実装フェーズの生産性を上げる製品は増えているが、フォーカスしているのは要件定義の自動化。自社の要件定義支援ツールにヒアリングの議事録を張り付けると業務フローを自動生成できるのが強みで、ソリューション案をつくるまで1~2時間程度と大幅な高速化が可能だ。「経験が浅いエンジニアでも要件定義ができるようになる」
SIerがユーザーとなる製品だが、導入して気に入るとパートナーとして販売してもらうケースも増えている。自社の製品を使って、SIerが自身の顧客に向けて開発したシステムが、顧客の生産性や売り上げの向上につながればと願う。「システム開発から日本の成長に貢献したい」
大きな課題に立ち向かう
心掛けているのは、社内も社外も現場をしっかり見ることだ。経営する立場にあるが、会社のメンバーとフラットな関係でありたいと、全員に敬語を使うようにしている。自身も含めそれぞれの役割の中で最大限のパフォーマンスを出すことで成長に近づくと考える。
SI業界では長年、気合いで無理矢理に何とかしてきた状況が続き、多重下請けなどさまざまな課題を抱えているとみる。これまで誰も挑まなかった大きな課題だ。だからこそ、上流工程から開発全体を自社の製品で良くしていくことで、「案件に関わる全員が幸せになる」未来を思い描いている。
プロフィール
松本 均
1982年生まれ、栃木県出身。新卒で日新コンピュータシステムに入社、受託開発の要件定義から実装まで経験。楽天、ヤフーなどを経て、ストライプデパートメントでECモールの開発を担当。2020年、ROUTE06を共同創業。
会社紹介
開発プロセス全体をAIで自動化・標準化する独自のプラットフォームを開発・提供。要件定義支援ツールの「Acsim」は、業務フローの可視化やROI試算、改善提案をAIが自動生成する。ノーコードでAIエージェントを設計・運用できる「Giselle」なども展開。