これからの時代(Era)をつくりだす存在となるであろう業界注目の若手経営者にフォーカス。そのビジネス観や経営哲学に迫ります。今回は「hacomono・蓮田健一代表取締役CEO」を取材しました。
黒子の哲学
家の前の壁に向かって、何時間もボールを蹴り続けた。幼稚園から夢中だったサッカー。憧れはマラドーナ。10番を背負い、自分で仕掛け、自分で決める選手だった。転機は中学で訪れる。強豪クラブに入り、試合に出られなくなった。ベンチで悔しさを飲み込む日々。そんな時、コーチから言われた。
「黒子のプレーヤーになれ」。フォワードから司令塔へ。足の速い選手、献身的な選手、それぞれを生かしてチームを動かす役割に変わった。「人の個性を生かすことが、自分の人生のテーマになった」。最初の会社名を「まちいろ」にしたのも、そんな思いからだった。
恩返しの経営
大学卒業後は、エンジニアとしてプロダクト開発に打ち込んだ。だが、東日本大震災を機に、父が経営する電気工事会社が経営危機に陥った。仕事が激減し、多額の借り入れも抱えていた。「親父が落ちていくのを見るのがつらかった」。迷った末に会社を継いだ。銀行へ通い、返済交渉を重ねた。介護タクシーも始めた。生き残るためなら何でもやった。結果として黒字化を実現し、借金を返済できる状態まで立て直した。
父が掲げた社訓がある。「はい、いいえ、素直。たとえ利益を失おうとも信用を失うなかれ」。自ら経営する立場になって、その意味を理解した。
日本一のフルリモート
2019年にリリースしたフィットネス業界向けのサービスは急成長した。それでも、つくりたかったのはシステムではない。目指すのは「人が人らしく働ける環境」。現在、社員は約320人で、多くがフルリモートで働く。北海道から沖縄まで居住地はさまざまだ。
「満員電車に揺られて働くより、自分の好きな地域で好きな人と暮らしながら働くほうがウェルネスだと思う」。投資家から出社回帰を勧められることもある。マネジメントの難しさはあるが、それでも考えは変わらない。「日本一それが上手な会社になれたら、ウェルネスな会社のロールモデルになれる」。人を生かす。その哲学は、中学時代から変わっていない。
プロフィール
蓮田健一
1976年生まれ、埼玉県出身。青山学院大学経営学部卒業。エイトレッドの開発責任者として「X-point」「AgileWorks」を生み出す。2011年の東日本大震災後、父親が経営する電気工事会社の再建に取り組む。13年にまちいろ(現hacomono)を創業。
会社紹介
ウェルネス・運動施設向けオールインワン・マネジメントシステム「hacomono」を提供。入会、予約、決済、会員管理などの手続きをオンラインで完結できる仕組み。フィットネスクラブや公共施設など全国1万3000施設以上で導入されている。