その他
低迷する日本のIP電話市場 VoIPに起爆剤はあるか
2002/09/23 15:00
週刊BCN 2002年09月23日vol.958掲載
VoIP(IPネットワークを利用した音声電話)の日米格差が広がりつつある。米国では、大手企業のみならず中小企業までもがVoIPの導入に積極的で、米シスコシステムズなどの主要ベンダーでは、これらの市場に向けたIP-PBX製品を投入開始する動きも出ている。だが、日本におけるVoIPの導入は低調で、IDCジャパンの調査でもVoIPを導入している企業はわずか8%にとどまっている。日本におけるVoIP普及の可能性はあるのか。米国の状況とともに、日本における普及の阻害要因などを追った。(大河原克行●取材/文)
付加価値提案がカギに
■コスト削減が魅力
米ハイテク調査会社IDCの発表によると、IPテレフォニーの市場は、2007年には1500億円規模に成長すると予測しており、現在の市場規模の約8倍と大幅な成長が見込まれている、また、別の調査では、企業におけるIP-PBXの比重は来年中にも50%を突破するとの予測もあり、米国ではIPベースの通信環境が主流になると見られている。
この背景には、コストメリットの大きさが挙げられる。米国では、広い国土を背景にしていることから、長距離電話の利用が必須となっている。そのため、通話コストの大幅な削減が可能なIPテレフォニー(VoIP)への関心が高まっているのだ。
米IDCの調査によると、キャリアを選択する際に最も重視しているのが「価格」であるという。大手企業になるほどサービス品質を求める傾向が強いが、それでも「価格」を重視する傾向には変わりない。
だが、日本では、人口や企業が首都圏に集中していることから、市内通話の比率が高く、米国のような大幅なコストメリットが享受しにくいという点がある。 そのため、IPテレフォニーの最大のメリットとされるコスト削減効果が薄いということになる。
■将来、IP化は必須に
国内の関連ベンダーやシステムインテグレータも、この点には気がつき始めており、国内市場の開拓では、むしろ付加価値型の提案を前面に打ち出すようになってきている。
なかでも、音声電話、FAX、電子メールなどが統合的に利用できるユニファイドメッセージング機能はその最たるものであり、ボイスメール機能や電話会議機能、さらにはIP電話機とパソコンとを連動した使い方の提案などが増えている。
また、最近では、コスト削減効果を通話料金だけで捉えずに、ビジネスの効率化という点にまで広げた提案を行う動きもある。
VoIPの導入では先進的である新生銀行の場合、マイクロソフトREJ(Rapid Economic Justification)によって導入効果を測定したところ、10か月間で投資を回収、5年間で9億円のベネフィットが見込めるという結果が出た。これだけの投資効果が見込めると、ユーザー側の見方も変わってくるはずだ。
しかし、初期導入コストの割高感はVoIP普及の阻害要因になっていることは日米に共通する事実である。
図は、米企業がVoIPを利用しない理由をまとめたものだが、500人未満の企業と、5000人を超える大企業においては、初期導入コストの割高感が大きな障害となっている。
だが、こんな意見もある。首都圏では、汐留、品川、六本木で大規模な再開発事業が推進されており、これにともなう企業の移転が増加。それと同時に、インフラをIP化するという動きが顕著になるという見方だ。
すでに、ベンダーの間では、「すぐにVoIP化を図らなくても、将来の流れを見据えて、インフラをIP化しておくというのが標準的な考え方。IPテレフォニー普及の最大のチャンスが訪れている」(大手メーカー幹部)というわけだ。
果たして、VoIPの市場が顕在化するかどうか。それは、企業の移転が増加するこの数年の間に、ベンダー、システムインテグレータがチャンスを逃さず、顧客にアプローチできるか否かにかかっている。
VoIP(IPネットワークを利用した音声電話)の日米格差が広がりつつある。米国では、大手企業のみならず中小企業までもがVoIPの導入に積極的で、米シスコシステムズなどの主要ベンダーでは、これらの市場に向けたIP-PBX製品を投入開始する動きも出ている。だが、日本におけるVoIPの導入は低調で、IDCジャパンの調査でもVoIPを導入している企業はわずか8%にとどまっている。日本におけるVoIP普及の可能性はあるのか。米国の状況とともに、日本における普及の阻害要因などを追った。(大河原克行●取材/文)
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