その他
注目度高まるスケールアウト方式 サーバー構築の新技術とは
2002/09/23 15:00
週刊BCN 2002年09月23日vol.958掲載
グリッドコンピューティングをめぐる動き
スケールアウト方式による高性能サーバー構築に向けて、NEC、プラットフォームコンピューティング、シトリックス・システムズ・ジャパンが急接近している。NECは、スケールアウト市場向けのサーバー販売台数の拡大を狙い、プラットフォームは、得意のグリッドコンピューティング技術の普及促進に弾みをつける。また、シトリックスは、「高価な中央サーバーが必要」という導入障壁を低くし、主力のメタフレーム商材の拡販につなげたい意向だ。(安藤章司●取材/文)
■多数のCPUを運用し、サーバーリソースを高性能化
スケールアウト方式とは、多数の汎用的で安価なCPUを統合的に運用することで、高い性能を発揮する技法。従来の高性能で高価なCPUを開発するスケールアップ方式よりも、拡張性や柔軟性があるシステムを安価に構築できるのが特徴。
これまでは、数百個、数千個と並ぶCPUを統合的に運用する手軽な方法がなく、スケールアウト方式による高速・高性能なサーバー構築は難しかった。このため、一部の高価な科学技術計算用の分散処理システム用などの限定的な事例はあるものの、一般業務用の情報システムとしての事例はほとんどなかった。
NECは、複数個のCPUを高密度で実装するブレードサーバーとグリッド技術を組み合わせ、一般業務で実用可能な高性能サーバーを実現する。これにより、より安く、手軽に高性能なサーバーリソース(サーバー資源)が得られる。
さらに、同社ではこのサーバー資源の活用先として、メタフレームや大規模ウェブサーバーなどを想定している。
高密度実装のブレード方式ならば、従来の薄型1Uサーバーに比べ、半分から3分の1程度の容積で済み、小さな空間に多数のCPUを集積することができる。これらをグリッド技術で統合的に運用することで、高性能なサーバーリソースを小さく、安くつくり出そうという計画だ。
NECの山内久典・クライアント・サーバ営業本部長は、「数百個のCPUを統合的に運用するには、これらCPUを管理するミドルウェアが必要になる。プラットフォームのグリッドコンピューティング技術を高密度実装のブレードサーバーに応用すれば、ある側面で、スーパーコンピュータ並みの処理能力をスーパーコン以下の価格で実現できる」と期待を寄せる。
プラットフォームの今井龍二・代表取締役カントリーマネージャーは、「米国ではIBM、HP、SGIと組んでグリッドコンピューティングの実用化に取り組んでいるが、国内ではNECと話を進めている」と、分散処理による高性能サーバーの実現に向け、NECと共同研究を進める。
「また、メタフレームやウェブサーバーのような、個々のジョブ間の関連性が少ない演算には、グリッドのような分散処理が威力を発揮しやすい」と、応用対象として適しているという。
シトリックスのマーケティング本部・竹内裕治シニアプロダクトマーケティングマネージャーは、「メタフレームのボトルネックは、サーバーの処理能力の限界にある。サーバーの処理能力が低いと、端末数やジョブの負荷が大きい場合に動作が鈍くなる。これを解決するための手法として、スケールアウト方式によるサーバー増強が今後の主流になるだろう。メタフレームを動かすサーバーは、汎用的で安価なCPUを複数個集積し、統合的な運用をした方が、高性能な1台より、費用対効果が高い」と指摘する。
■演算能力は飛躍的に向上 サーバー市場の拡大も
スケールアウトという方式により、複数個のCPUを1つのサーバーリソースとして動かすグリッドコンピューティング技術とは、たとえば、電力供給の構造に似ている。
「コンセントから電源を取り出して冷蔵庫や掃除機を動かす。だが、われわれは、この電力がどの発電所で作られたものなのか、まったく気にすることがない。グリッドも同じ。あるジョブをコンピュータに処理させる時、このジョブがどのCPUで処理されたのかを気にする必要はない。ただ、速く確実に処理されていれば済むことだ」(今井カントリーマネージャー)と話す。
今井氏によれば、グリッドの発展段階は次の3段階をたどるという。
①エンタープライズグリッド(=企業内グリッド)、②パートナーグリッド、③サービスグリッド――である。
今回の試みのように、高密度実装のブレードサーバー群を、グリッドのミドルウェアで統合し、サーバー負荷の大きいメタフレームというアプリケーションをスケールアウト方式で動かすのは、グリッドの初期段階の①に相当する。
たとえば、ある企業内で42Uのラックにブレードを積み込むとする。NECのハイエンドブレードサーバーの場合は、3Uに12個のCPUであるため、単純に計算して1ラック168CPUになる。この168個のCPUを統合し、“小さなグリッド環境を構築する”ことで、演算能力を飛躍的に高められる。
「100-200個程度のCPUならば、手作業でジョブを分散させることも可能かもしれないが、1000個を超えるようなCPUを統合的に運用しようとすれば、手作業ではまず無理。ストレージ(ハードディスク)は、二重化のためCPUの2-3倍の数が並ぶわけで、恐らく、毎日のようにどこかのハードディスクがエラーを起こす。グリッド技術を用いたソフトウェアを使い、効率的に運用するべき」(今井カントリーマネージャー)と売り込みに熱が入る。
こうしたグリッドコンピューティングの市場を開拓できれば、CPUの需要が高まり、NECなどハードベンダーにとって利益がある。
今回のように「グリッド+ブレード+メタフレーム」などの組み合わせ分野で先行しておけば、同じようなハードウェアをつくる競合他社との差別化にもつながる。
NECの山内本部長が、「メタフレームを国内で最も多く売っているのは当社」と豪語するように、今後もメタフレームの販売を通じたサーバーシェアの拡大を図れる。
将来的には、ネットワークを使い、離れたコンピュータ間でジョブを分散する②や、一般の利用者が、まるで“コンセントから電力を取り出す”ように“ネットワークからコンピュータリソースを自由に取り出す”ことを想定した③の段階に発展するという。
スケールアウトによる分散処理は、まだ発展の初期段階に過ぎないものの、見逃せない技術動向であることに違いはない。
●スケールアウト方式についての各社のコメント
シトリックス・システムズ・ジャパン 竹内裕治マネージャー
スケールアウト方式は、メタフレームサーバーの主流になる。ブレードとグリッドの組み合わせによる安価で高性能な分散処理型サーバーの開発に期待。
プラットフォームコンピューティング 今井龍二代表取締役
国内ではNECとの協業を進める。グリッドは、メタフレームや大規模ウェブサーバーなど、個々のジョブ単位が小さい演算処理に威力を発揮。集積度が高いブレードサーバー群内に小さなグリッド環境をつくることで、処理速度が飛躍的に向上する。
NEC 山内久典本部長
ブレード+グリッド+メタフレームで、競合他社のハードウェアとの差別化を図る。ブレードは、技術的な突破口であり、これを基盤に、新しい分散コンピューティングを探求する。今回のグリッド+メタフレームは、新しい試みの第一歩。
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