低価格と付加価値の両立へ

　日本ヒューレット・パッカード（日本HP、樋口泰行社長）が、今年に入って5回目のサーバー製品の大幅値下げを8月6日に発表した。今回は、IA32（インテルアーキテクチャ32ビット）サーバー「プロライアント」を最大24％、メモリオプションは同42％値下げした。樋口社長は「来年度（2004年10月期）は、今年度比で売上高2ケタ成長を目指す」と、強気な成長計画を打ち出す。成長のキーワードは、（1）徹底した低価格攻勢、（2）情報システムの仮想化技術を基盤としたITコンサルティングサービス「アダプティブ・エンタープライズ（AE）」戦略の推進、（3）64ビットのアイテニアムプロセッサファミリ（IPF）搭載サーバーの立ち上げ――の3つである。

　今年に入って1回目の値下げを発表した1月、同社はIAサーバーでシェア30％の獲得を表明した。それ以降、断続的な値下げ戦略を打ち出したことで、「1月時点に比べて、IAサーバーの台数シェアは4―5ポイント拡大し、4―6月はシェアが17―18％にまで拡大した」（石積尚幸・執行役員エンタープライズストレージ＆サーバ統括本部長）という。しかし、価格戦略だけでは販売台数は伸びても、売上高を2ケタ成長させることはできない。これを打開するのが、（1）AE戦略によるコンサルティングビジネスの強化、（2）徹底したオープン化による提携戦略の推進、（3）迅速なデリバリー（配送）や保証期間の延長など付加価値サービスの拡充――である。

　AE戦略では今年度（03年10月期）、日本HPによる直販方式で大手企業約10社に同戦略に基づくシステム構築を適用する。来年度にはAE適用範囲を30―50社に増やす計画で、システムインテグレータとの協業も進める。また、8月4日には、マイクロソフトと共同で「ミッションクリティカル領域における協業関係を確立した」と発表した。沖本重之・日本HP執行役員コンサルティング統括本部副統括本部長は、「当社のAE戦略とウィンドウズのミッションクリティカル領域への進出が、IA32およびIA64ビットのオープンプラットフォームの上で合致した」と話す。

　マイクロソフトとの全面提携により、IAやIPFのハードウェアだけでなく、ウィンドウズを基盤にしたより多くのアプリケーションを日本HPの中に取り込むことも可能になる。その上で、コンサルティングビジネスを強化し、迅速なデリバリーや保証期間を一部3年に延長するなど、付加価値を高める。デリバリーでは、主力IA32サーバーの「プロライアント」について、従来の「発注から5営業日で届ける」体制に加え、ラックの中にサーバー本体とストレージなど周辺機器を組み込み、7―12営業日で届ける「ファクトリインテグレーションデリバリモデル」も新しく始めた。サーバー単体で売るより、ラックに入ったシステム全体で販売した方が、商談規模が大きくなるという。

　樋口社長は、「まず、IAおよびIPF領域でのドミナント戦略を展開し、徹底したシェア拡大を目指す。そのうえで、コンサルティングサービスやミッションクリティカル領域における付加価値サービス、パートナー提携戦略を拡充することで、旧日本HPと旧コンパックコンピュータを合わせた以上の蕫強い日本ＨＰ﨟をつくる」と鼻息が荒い。樋口社長が5月に就任してから3か月余り。矢継ぎ早に新戦略を打ち出し、業績拡大に力を入れ始めた。いよいよ樋口新体制が本格稼働に入った。　安藤章司●取材／文