環境保全への対応を急げ

　グリーン調達調査について業界標準の作成を進めてきた「グリーン調達調査共通化協議会（JGPSSI）」が、共通化のためのガイドラインをまとめ、このほど運用が開始された。EU（欧州連合）のＲｏＨＳ指令（特定危険物質の使用制限指令）により、2006年7月には鉛や水銀などの環境汚染物質を電子部品などに使用することが禁止される予定にあるなど、各国で特定の化学物質に対する使用規制や環境保全に対する規制は強化される一方だ。それに対して、電子部品メーカーやセットメーカーは、規制への対応を図るための情報収集量の拡大や、使用する物質・部品の転換に時間がかかるといった問題を抱えている。

　日本のメーカーでは、97年12月に開かれた地球温暖化防止京都会議（COP3）の前後から、環境保全に対する取り組みを強化し、CO2（二酸化炭素）の削減から環境報告書の作成、グリーン調達への転換と、「環境経営」を確立してきた。しかし、年々規制が強化されてくる化学物質の取り扱いについては、迅速に対応できなかったのが事実。そこでこの問題を解決するために、01年1月にJGPSSIが発足し、業界標準として、グリーン調達調査の共通化を図ったわけだ。

　今回発表したガイドラインは、「海外のグリーン調達情報との整合性を高めた」（古田清人・JGPSSI議長＝キヤノン・グローバル環境推進本部環境統括・技術センター環境企画部長）と、海外の化学物質規制への対応を同時に図ったのがミソ。EICTA（欧州情報通信技術製造者協会）、EIA（米国電子工業会）と議論を重ね、「すでに3極で合意した内容」（同）だという。その一環としてグローバルスタンダードに合わせるため、既存の金属化合物、ハロゲン系有機化合物、その他の3分類で28種の物質を取り上げた旧分類から、分類方法を変更し、調査対象リストを29物質に変えた。

　新ガイドラインは、この調査対象29物質をコアとして共通化したほか、対象物質の使用有無の回答フォーマット、調査・回答を行うためのツールも共通化している。このツールをベースにして、各社が独自のグリーン調達ツールを開発することが可能だ。また、基礎データの共通化で、独自のグリーン調達ガイドラインの作成も迅速に行えるようになり、情報開示もスピードアップされる。日本化学工業協会（日化協）はこのほど、電子情報技術産業協会（JEITA）がJGPSSIのガイドラインを会員企業に普及させていくのを受けて、化学メーカーなどで構成する日化協会員に対して、電機・電子メーカー向けにグリーン調達の調査対応の推奨案を作成した。

　JGPSSIが作成したリスト対象29物質を含有する化学品について、国内法では必要のない低濃度物質についても、MSDS（製品安全データシート）の内容を補完して提供することにしており、調査に対して化学メーカーが迅速に回答できる体制を整備する。EUばかりでなく、環境保全に対する規制は今後も継続して強化されていくだろう。EUの規制強化に対応しなければ輸出ができなくなる電機・電子業界にとって、いち早く対応するための業界標準作りは焦眉の急だった。さらに、調査対象となる化学メーカー側も、ただちに協力できる体制をとろうとしている。環境問題に確実に対応していくためには、これからも業界を超えた協力が不可欠になる。　川井直樹●取材／文