フロンティアAIと呼ばれる高性能な汎用AIモデルの登場に伴い、企業には最新のサイバー脅威に対する速やかな対応が求められている。その中で有効な対策を提案するのが、フォアスカウト・テクノロジーズ(以下、フォアスカウト)だ。同社は、ユニバーサル・ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス(UZTNA)というアーキテクチャを提唱し、組織内につながるあらゆる機器・資産の検出からリスク評価、エクスポージャー管理、ネットワーク制御、統制(ガバナンス)までを一元的に担うソリューションを提供する。7月28日には同社のエグゼクティブチームが来日し、日本市場でどのような施策を展開していくのかを語った。同社の事業戦略について、バリー・マインツCEOとダニエル・ドス・サントス リサーチ担当バイスプレジデント(VP)、日本法人の北川剛 代表執行役社長に聞いた。
組織につながるあらゆる機器・機械を一括で統制する「Forescout VistaroTM platform」
フォアスカウトは、グローバルで25年、日本でも20年以上にわたる事業実績を持つ、エクスポージャー管理とネットワークセキュリティを手掛ける米国のサイバーセキュリティベンダーだ。元々はネットワークアクセス制御(NAC)領域を主としていたが、現在は統合基盤製品「Forescout Vistaro platform」を提供しサービスを拡張。また、オランダにサイバー脅威インテリジェンス研究・脅威インテリジェンスチーム「Vedere Labs」を構え、さまざまな機器の脆弱性探索や各国のサイバーセキュリティ機関との情報共有を行い、その結果をVistaro platformのサービスにも反映させている。世界ではFortune 100企業の59%が同社のソリューションを利用しており、日本でも政府・公共系機関から大手の重要インフラ事業者、金融機関、製造業など多種多様な組織で利用されている。
Vistaro platformは、企業内につながるデジタル資産の検出から、それらのリスク評価、継続的なエクスポージャー管理、ネットワークのセグメンテーションやアクセスの制御、そして各種規制や自社のセキュリティポリシーに合わせた統制までを、単一のプラットフォーム上で動的に行えるソリューションだ。特筆すべきは、ITだけでなくIoT、OT(Operational Technology:社会インフラや産業設備を制御・運用するための技術)、さらにはIoMT(Internet of Medical Things:ネットワーク接続された医療機器)を含むあらゆるサイバーフィジカル環境を防御対象にしている点だ。
「かつて組織は、主にエンドポイントに対してEDRを適用すればサイバーセキュリティ対策ができた。しかし今は、守るべき領域が広がっている。多種多様なIT・IoTデバイスが登場するとともに、あらゆる機器・機械のネットワーク化も加速し、それに伴って攻撃対象領域(アタックサーフェス)が拡大しているのだ。攻撃者は領域内部での横展開によって企業や重要インフラの内部に入り込み、機能を麻痺させてくるため、EDRだけでは対処できない」と、マインツCEOは現状のリスクを指摘する。
フォアスカウト・テクノロジーズ
最高経営責任者
バリー・マインツ
あわせてドス・サントスVPも「IT領域に関しては、EDRは非常に高い効果を発揮する。その結果、攻撃者はEDRを回避しようと、他のデバイスに目を付けるようになった。また従来はITとOTが明確に分かれていてそれらを別々に考えればよかったが、今はそうではなく、ITとOTの中間にもさまざまなデバイスが存在している」と解説する。
フォアスカウト・テクノロジーズ
リサーチ担当バイスプレジデント
ダニエル・ドス・サントス
オンリーワンのネットワークセキュリティを提供
そのような状況に対して、フォアスカウトはユニバーサル・ゼロトラスト・ネットワーク・アクセス(UZTNA)のアプローチで防御を実現する。企業や組織のネットワークに接続するIT、IoT、OT、IoMTにわたるすべてのサイバー資産を継続的に検出・分類してリスクを評価。リアルタイムの資産コンテキストに基づいて、組織がネットワークアクセスを制御し、ネットワークをセグメント化して脅威を封じ込めることを可能にする。「競合他社ができるのは最初の可視化のところまで。当社はその後の対策までを網羅したサービスを提供している」と、マインツCEOはUZTNAの優位性を語る。
管理面でも、IT領域からOT領域までの混在環境におけるリスクを可視化し、そこでの対策を一括して行うことが可能だ。セキュリティ管理者向けには「Forescout VistaroAI
TM 」というエージェントAI搭載の管理画面が用意されており、データを自動的に収集・分析・統合し、利用者の役割に合わせてパーソナライズされた推奨アクションを提示する。リアルタイムのアセットインテリジェンスとリスクのコンテキストを組み合わせることで、組織は事業運営に影響を与える可能性が最も高いリスクへの是正措置に注力できる。
フォアスカウトのソリューション
狙われる日本市場に向けたフォアスカウトの第二章
市場環境について、Vedere Labsのトップを務めるドス・サントスVPは「日本は世界の攻撃者から狙われている」と警鐘を鳴らす。同社の調査によると、日本を標的とする脅威アクターの数は過去2年間で82%増加した。「金銭的利益を目的としたランサムウェア攻撃件数は、2026年初頭の時点で、世界全体では前年比25%増であったのに対し、日本の組織に対するランサムウェア攻撃は39%増加した。政治的・社会的な主張のためにハッキングを行うハクティビストからも標的にされている」(ドス・サントスVP)
こうした被害の背景にあるのが、攻撃対象領域の広がりだ。日本国内でインターネットに露出するデバイスは2200万台を超え、2024年の観測時よりも34%増加した。実際に、温室農業システムや防犯カメラ、産業用制御システムが乗っ取られる事例も報告されている。
そのような状況でフォアスカウトは、日本市場への注力を明言する。日本法人の北川社長も「今は事業を拡大するタイミング。国内でのフォアスカウトの第二章が始まる」と語る。
フォアスカウト・テクノロジーズ
代表執行役社長
北川 剛
その根拠として北川社長は、ITからIoT、OT、IoMTまで一貫したリスク対策の重要性が高まっていることに加え、「フロンティアAIによる脅威が増していること」と、「能動的サイバー防御法の施行に伴う影響」を挙げる。「『企業における資産と脆弱な箇所を的確に把握し、それをコントロールする』ことは、あらゆる通達やガイドラインにおいて強調されていることだ。フォアスカウトのソリューションは、そこに合致する」(北川社長)
例えば、金融庁と日本銀行が5月22日に発出した「『フロンティアAIによる脅威変化を踏まえた金融機関等の短期的な対応』に係る要請」に示されている短期的対応(大量の脆弱性への対応)9項目のうち、「(2)優先的に対応すべきサービス/ITシステムを特定する」「(3)特定した資産の技術負債を解消しておく」「(6)パッチ適用プロセスをリスクベースにする」「(7)パッチ適用以外の対策も強化する(内部侵入後の横展開への対策など)」「(8)優先サービス/ITシステムの停止に備える」の5項目がフォアスカウトで支援できる領域だ。北川社長は「要請の直後にパートナーと金融機関向けセミナーを共催してから、金融機関からの問い合わせが急増した」という。
直近の国内での具体的な取り組みとして北川社長は、「重点業界(重要インフラ15分野)における影響力のある戦略顧客への提案および大型案件創出」「パートナー・エコシステム拡大」「認知度向上」の3点を挙げる。「2029年末までに事業規模を3倍にする。成長の余地は確実にある。そのために技術・再販のパートナーを2倍に増やし、特にフロンティアAI問題に対する早期対応を可能とする枠組みを構築してパートナーと展開していきたい」(北川社長)
各方面のパートナーとの連携が必須に
マインツCEOも「我々自身、日本に対する投資が不足しているという認識はあった。日本は大企業が多く、重要インフラを担う業態が発達している。銀行、製造、エレクトロニクス、通信などの企業も多い。日本の企業はサイバーセキュリティ対策が遅れているなどと言われているが、ソフトウェアやハードウェアのベースはしっかりとしているので、対策を進めていくために必要な要素はそろっている。その意味では、フォアスカウトの事業に適した市場だ」と話す。
その上で同氏は「フロンティアAIで世の中の様相はガラッと変わる。それは推測ではなく、いつ起こるのかという話だ。AIによって攻撃の手口が高度化し、運用上の複雑さが増す中、組織が新たなリスクを効果的に評価・管理するためには、接続されたすべての資産と通信経路を正確に把握しておく必要がある。幸いにもフォアスカウトは、非常に優れたソリューションとチームを有しているので、そこにしっかりと対応できる」と述べる。実際に昨年、米国に拠点を置くテクノロジー企業であるF5がサイバー侵害を受けた際にも、フォアスカウトの顧客である金融機関のほとんどは影響を受けなかった。
同社の脅威調査部門を率いるドス・サントスVPは、日本でビジネスを拡大するにあたり重要なのがパートナーの力だと語る。「当社はすでにEDRベンダーと連携しながらビジネスを展開しており、幅広いポートフォリオがあっても1社だけですべての対策が成り立つわけではない。他社のソリューションとの連携も必須だ」(ドス・サントスVP)
現状フォアスカウトでは特定領域の大組織を優先的なターゲットにしているが、今後は組織の大小を問わず多種多様な業界の企業に対しても有効なソリューションになるということだ。2026年から2027年にかけて段階的に施行される予定の「能動的サイバー防御法」では重要インフラ15分野が定義されており、まずはそこがターゲットになる。北川社長は「ただし、法の中身を見るとサプライチェーンも対象になっており、上流の大企業は取引先に対しても規定を守らせるようになるので、当然そこに連なる企業もターゲットになる。特にフォアスカウトはOTセキュリティに強みを持っているので、この領域に知見を持つSIパートナーとも積極的に連携していきたい」と、各分野で強みを持つSIerや販売店に向けてメッセージを送った。