生成AIによって脆弱性の発見から悪用までの時間が縮まり、Webアプリケーションを狙う攻撃が急増している。そのような中でサイバーセキュリティクラウドでは、WAFとクラウドセキュリティ運用を組み合わせた守りを、販売パートナーとの共創で広げようとしている。AIの発展による脆弱性の脅威や攻撃手法の多様化に対して、同社のサービスやパートナーを含めた販売戦略について渡辺洋司代表取締役CTOに話を聞いた。
生成AIが変えた攻防 WAFが「時間を稼ぐ」
従来、ソフトウェアの脆弱性は熟練の技術者が時間をかけて見つけていた。それが生成AIの普及で一変した。「AIが1~2日で、しかも大量に発見できる時代になった」と、サイバーセキュリティクラウドの渡辺洋司代表取締役CTOは話す。
サイバーセキュリティクラウド
代表取締役 CTO
渡辺 洋司
脆弱性が発見されること自体は好ましい。しかし、攻撃側もAIの活用を進めており、ソフトウェア公開からセキュリティホールが見つかり、そこを突かれて被害が出るまでの猶予は短くなる一方だ。同社は、提供サービスで検知したサイバー攻撃のログを分析したレポートを四半期ごとに公表している。それによると、2026年4~6月期のWebアプリケーションへの攻撃検知は約7億9475万件。1秒あたり約101回に相当し、前年同期の約1.5倍に拡大している。※
問題は、脆弱性が判明してもシステムをすぐには修正できないことだ。稼働中の業務システムならなおさらだ。そこで同社は、修正までの時間をWAF(Web Application Firewall)で稼ぐ。クラウド型WAF「攻撃遮断くん」やAWS WAF自動運用サービス「WafCharm」が仮想パッチとして働き、改修なしで攻撃を止める。加えて脆弱性管理サービス「SIDfm」で、自社の資産と該当する脆弱性を把握する。
クラウド型WAFから脆弱性管理、フルマネージドセキュリティまで、
サイバーセキュリティソリューションを幅広くそろえている
速さを支えるのは社内の脅威インテリジェンスグループだ。脆弱性情報を収集し、「WAFで守るべきか、既存ルールで防げるか」を判断するプロセスも自動化した。
※同社が提供するサービスにて検知・観測したサイバー攻撃ログを集約・分析・算出したデータを参照
導入から運用へ クラウド全体を見るCloudFastener
同社は2010年の創業後、2013年にサイバーセキュリティ事業を開始した。昨今は、導入から運用へと顧客ニーズが変化しつつあるという。事業継続の観点からクラウド移行が進む一方、クラウドは設定の自由度が高く、責任共有モデルの下でユーザー側に抜け漏れが生じやすい。
このニーズをすくい上げているのが、フルマネージドセキュリティサービス「CloudFastener」だ。クラウド資産の可視化から設定不備や脅威の検知、リスクのトリアージ、インシデント後の対応までをワンストップで引き受ける。「入り口を守るだけでも、管理するだけでもない。予防から事後対応まで、面倒な部分を我々が受け持つ」と渡辺CTOは語る。
旅行会社のJTBは、データセンター閉鎖に伴うクラウド移行で同ソリューションを採用した。専任のテクニカルアカウントマネージャー(TAM)の伴走支援により、人材を内製で抱えずに従来水準の運用体制を築いたという。
相乗効果が開くパートナービジネス包括的なセキュア環境を届ける
目まぐるしく変化するセキュリティ市場で、多様化する脅威から顧客を守るには包括的でセキュアな環境づくりが不可欠だ。サイバーセキュリティクラウドがパートナービジネスを強化する理由もここにある。直販機能も持つ同社だが、成長を加速させ顧客へ多層的な価値を届ける鍵は「相乗効果を意識した共創」にあると捉える。
互いの強みを掛け合わせる代表例が、IIJ(インターネットイニシアティブ)との連携だ。主力サービス「攻撃遮断くん」の稼働基盤はIIJクラウド上にあり、IIJは自社インフラにセキュリティ価値を付加でき、同社はIIJの広大な販売網・顧客基盤へ展開できる。互いの基盤を高め合い広く深い市場へアプローチする体制が評価され、2026年2月には「IIJ Partner of the Year 2025」大賞を受賞した。
この共創で得た手応えは三つある。第一は、単独では届きにくかった業界やエンタープライズ層へ包括的な提案が届く点。第二は、高信頼な基盤との連動により、高水準の防御力を保ったまま柔軟に拡張できる点。第三は、市場開拓を共に議論する現場の知見が、自社のサービス開発を磨く糧になっている点だ。
現在サイバーセキュリティクラウドでは、パートナーのサービスを「Powered by CSC」として展開するパッケージ販売や共同セミナー、運用定着を支えるオンボーディング支援などを推進し、協業を一段と深めている。「売って終わりではなく、パートナーと共に顧客と長く伴走し安心を支え続けたい」と渡辺CTOは語る。変化の激しい市場を見据え、同社はパートナーシップを通じた提供価値の最大化を加速させている。